ぴのした

勝手にふるえてろのぴのしたのレビュー・感想・評価

勝手にふるえてろ(2017年製作の映画)
4.5
今年1くらいで良かった!!!良いというかなんというか、もうただ純粋に好き!!!あー好き!!!好き!!!!

物語のテンポの良さ、妄想をそのまま映像にしたミュージカルのような表現、コントのようにリズミカルな会話と、全体的に高いギャグセンス、それを支える松岡茉優と渡辺大知のナチュラルな演技…そして映画的な面白さで溢れてるのに、全く損なわれない文学性。

何が文学的かというと、やっぱり人物描写というか主人公の心の動きがすごくよく伝わってくるんだよな。主人公のヨシカは恋人いない歴=年齢、自己肯定感低め、妄想にふけるのが趣味。これだけ聞くとかなりキツそうに思うんだけど、「私拗らせ女子だから周りの人なんか知るか〜〜」って感じではなく、ボヤを起こしたらアパートの住人に菓子折りを配って回ったり、年末に家の扉に正月の飾りをつけてから帰省したりと自分なりに譲れない社会性を持っていたりして、そういうところがキャラクターにリアリティがあっていいなーと思う。

同じこじらせ女子を描いた映画でも『夜空はいつでも最高密度の青色だ』の主人公の女はほんとに好きになれなかったのに、こっちは見ていてむちゃくちゃ主人公のことを好きになってしまう。それはほんとひとえに、そういうキャラクター描写の深さによるものだと思う。(純粋に松岡茉優が可愛いってのもある)

自己肯定感が低く、本能で生きる人を野蛮と思っていたヨシカが、片思いの彼の夢に敗れ、自分の妄想に向き合い、本能のままに生きる泥臭くも実直な「二」に愛おしさを感じてしまうというストーリーというか、そういうヨシカの心情の変化がよく分かる。そういうところよね、そういうのが文学的だなーと思う。面白い。

この「二」演じる渡辺大知は黒猫チェルシーのボーカルなんだね。初めて知った。演技うまいし最後の曲もすごく良かった。黒猫チェルシー聞いてみよかな。

カメラワークも面白かったなー。ワンカットが割と短くてなおかつ引きの画が多いから、人物描写が濃密なわりに観客は登場人物から一歩引いて楽しめる感じ。あとミュージカルのように劇的なシーンもあれば、人の顔がアップの時は手持ちカメラのブレで臨場感もあって。あとは映像が全体的にボケ感が強くて美しい。岩井俊二的な。映さなくてもいいのにわざと画面の手前の端っこの方にコップとか置いてぼかしている。

あっという間に終わってしまうほど面白い映画を見た満足感と、手の込んだコントを見たような興奮の余韻、分厚い本を読んだようなずっしりとした幸福感に浸っています。ぜひ見て!