YokoGoto

勝手にふるえてろのYokoGotoのレビュー・感想・評価

勝手にふるえてろ(2017年製作の映画)
4.2
ー久しぶりの傑作ラブ・ストーリー!素直でむき出しの恋に胸キュンー

公開当時、非常に評判の良かった本作。松岡茉優さんが初主演の映画であり、彼女の好演が光るという類(たぐい)のレビューを目にして、観るのが楽しみだった。

原作は芥川賞作家の綿矢りさ氏。

中学時代に恋した彼を忘れられずに、10年間、脳内恋愛を続け、リアルな恋に向き合えないOL役を松岡茉優さんが演じている。特に、彼女のこじらせ女子ぶりがなんとも胸に痛み、その不器用さが憎めず、かわいらしい主人公が最高である。

そう、中学時代の叶わぬ恋は、実に麻薬である。

その距離が遠ければ遠いほど、彼の存在は神格化し、リアルな恋では味わえない美化されたラブ・ストーリーを描いてしまう。これは、多くの女性が共感できるテーマなのだ。

本編に出てくる「視野見」。『わかるーー!』という女子は多数だろう。笑

本作のジャンルとしては、ラブ・ストーリー&コメディだ。本編の前半部分は、この乙女心をコメディタッチに描いているので、一瞬、軽いコメディかと見誤る。(ここは我慢して後半までみるべし)

物語が一変するのが、後半の50分。
恋をこじらせた主人公の、身勝手ながらも、実に不器用な心に、ホロリと涙がこぼれてしまうほど、感情移入させられてしまった。

実に、このシナリオの大胆な感じは、とても好き。
つまりは、主人公の気持ちに感情移入すると共に、未熟な恋を踏み台にして大人になっていく、女の成長物語にも見え、多くの女性が共感できる話だと思う。

さらに、脳内恋愛の相手である、中学時代の同級生とは反対側の、リアルな恋愛も、なかなかピュアでかわいらしい。特に、ラスト10分。最高だった。思わず、ラストは巻き戻して2回観た。

このシーンは、多くの女性が胸キュンものである。
もちろん、ラストで感動するのは、前半のシナリオの積み上げがあってのこと。

このラストを迎えるまでに、十分主人公に共感した上でのラストシーンなので、感動もひとしおなのである。久しぶりに、可愛らしいラブ・ストーリーだったと思う。

恋愛なんてものは、綺麗事ばかりじゃない。

壁ドンや顎クイとか、まるで昭和の時代の少女マンガのワンシーンみたいなシーンなんて、日常の恋には、そうそう起こるはずもなく、ひたすら、自尊心やプライドと闘いながら、かっこ悪い自分も認めながら、めんどくさいことを乗り越えて、相手との距離を近づけることの繰り返しなのだ。

だからこそ、これほどまでに正直でむき出しの恋を、テンポよく描かれると、無防備なハートは撃ち抜かれるものであり、「映画っていいよね』ということになる。

本作は、綿矢りささん原作の、女性監督による作品。
女心は、良くも悪くも女に描かせるのが、やはりほどよい。
YokoGoto

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