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勝手にふるえてろのkrhのレビュー・感想・評価

勝手にふるえてろ(2017年製作の映画)
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お、おもしれ〜〜〜〜となりつつも絶え間なく被弾でダメージ大。
原作は未読。松岡茉優さん凄すぎ。

夕陽の演出や、ミュージカル調で現実を畳み掛ける細切れのカットなど、映像演出の面白さをシーンごと存分に出してくれるのが本当に楽しかった。

現実と虚構を「反復横跳び」しながら、それでも虚構の粗から滲み出る現実にジリジリと焦がされるような感覚から、一気にナイフを突き立てられて稚拙な逃避に走ってしまう衝動には冷や汗が出る。

頭の中の虚構と現実との乖離そのものこそが、その人に突きつけられる「現実」なんだと思った。ひとりで妄想を育てて再生するヨシカはもちろんのこと、彼女に想いを募らせて空回りする「二」だって、「現実」が見えていなかった。他者との関わり合いが社会であるならば、生身のはずの人間を頭の中に住まわせることは、社会生活において何の意味も持たない。
しかしながら、自分のためだけの虚構は時に眩しく見えるほどの価値を持ち得るものだということをヨシカは身を削って体現する。現実の素晴らしさとつまらなさ、虚構のくだらなさと尊さ。

大声でぶつけ合うラストの土砂降りびしょ濡れ痴話喧嘩は、彼女たちにとって究極の「現実」とのすり合わせ。なんだかんだで虚構の中に自分の人生はないんですよね…(そうしたいなら勝手にふるえてろ)
玄関にぎゅっと収まってちゅーしてるの最高にかわいかったな。

それにしても服飾演出が凄まじかった、ヨシカちゃんの服の話で3時間しゃべりたい。もう「履き潰したミネトンカ」の絶妙さに絶句してしまった…
マフラーのチョイスと巻き方(と外し方)、チェック柄のあれこれ、トレンチコート(ベルトの結び方)、シャギー生地のコクーンコート、ワイドパンツにムートンブーツ(しかも黒)、とっておきに出すのが、あの高さと色と形のエナメルパンプス…もはや呻き声が出るほど人物像ぴったり。すごすぎ。
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