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メゾン・ド・ヒミコのmnのレビュー・感想・評価

メゾン・ド・ヒミコ(2005年製作の映画)
4.0
少々ネタバレ有り。
大学生の頃に初めて見て、それから時々ふと思い出す作品。周到に選ばれた台詞と繊細な演技で、人との繋がり方や感情の動きをものすごく丁寧に映しているところに惹かれる。

かつて妻と娘の沙織を捨ててゲイバーのママになった卑弥呼、そして彼(彼女)が作ったゲイの為の老人ホーム「メゾン・ド・ヒミコ」。
突然現れた卑弥呼の若く美しい恋人である春彦に、メゾンでの高額のバイトを頼まれて渋々承諾する沙織。最初は閉じ切っていた沙織の心が、メゾンの住人たちと過ごすうち徐々に開いていく様子がよく見て取れる。

そんな心の変化はやがて春彦にも芽生えていき、ゲイである彼がとうとう沙織を誘う。
このシーンで言い放たれる沙織の一言がすごく刺さる。どこにも行き場のない感情が部屋の中に漂い、めちゃくちゃ切ないやりとり。

あともう一つ印象に残ってるのが、
これまでほぼずっとつんけんしていた沙織が、ラストで初めて涙を流すシーン。ただ無言で泣く鋭い目は「どうしてそれを言うのよ?」と言いたいんだろうなと推察するけど、口にしてもどうにもならないとわかっているから言葉にはしない。心は繋がっても異性として結ばれることができない2人。悔しさとやりきれなさで胸をいっぱいにして涙をこぼす柴崎コウ(沙織)の顔は、すっぴんだし他では見たことない位ブサイクなんだけど、ものすごく良い顔してる。

あとは田中泯とオダギリジョーの絶妙にユニセックスな雰囲気の魅力もたまらんのだけど、もうそれより沙織の上司役の西島さんが、今となっては絶対やらなさそうなチャラくて軽くて色気抜群(でも全然下品じゃない)の役柄で完全優勝。
ちゃんと作られた素晴らしい邦画。
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