癒しの芸術
モダニズム建築の宝庫として知られるインディアナ州コロンバスを舞台に、対照的な2人の男女が織り成すひとときの運命の交差と決断を描いた人間ドラマ、、、
これは劇場の大きいスクリーンで観たかったなと思う作品でした。
全てのシーンを絵画にできるのではないかというくらいファーストカットから非の打ち所がない完璧なショットの連続。
歩んできた道や人となり。
建築への興味関心。
親に対する考え方や関係性。
そして最後に下した決断。
全てにおいて対照的な二人が繰り広げるシンプルかつ繊細な会話劇。
分かりやすく感情を出すのはダンスシーンくらいで、基本的には静かに画ひとつで感情の起伏を物語る。
たとえ台詞が無かったとしても状況の説明がついてしまうような人と物の配置が見事。
小津監督の作品をまだ1本しか観ていないのでどの辺りが共通点なのかはあまり掴めなかったが、
小津映画の特徴である家族のあり方を題材とした点、なんらかの形で"赤"を取り入れるという点はオマージュしていたのではないかと思う。
いずれにしてもこの作品自体がモダニズム建築のような直線的な美しさを纏った素晴らしい構図なのは間違いない。
ピロティや橋をバックにしたシーン。二人が初めて言葉を交わすシーンの二人の間にある柵の使い方。ガラス張りの銀行での"なぜ感動したのか"という質問に対する答えの映し方は特に心に残った。
序盤のカレーを食べるシーンで
"もう少しスパイスを効かせたほうがいいかも"と言う母に対し、
"繊細な味にしたかったの"
"素材本来の味が分かるし、後味もいいからよ"
と返答するが、これはこの映画の事なのかもしれませんね。