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コロンバスのいののレビュー・感想・評価

コロンバス(2017年製作の映画)
4.4
「建物には癒やしの力がある」


この言葉を信じてる女性と信じてない男性。いや、信じたい女性と信じたくない男性。上記の会話がなされているときにも、人と人との架け橋となり得るような建築物が映し出されている。観ているわたしは、この言葉を信じてしまっている。迷いのない構図、迷いのない映像。建築物が意志あるものとしてそこにある。建築物は、ニンゲンの言葉こそ発しないけれど、静謐に控えめに語っているような。十代の女性と、おそらくは三十代の男性。二人での会話というより、そこにはいつも建築物が立ち会っていて、見守ったり背中を押したり、あるいはただただそこにいるというだけでかけがえのない存在であり続けている。ガラスや窓、そこから射し込む灯りや陽光、木々の緑や川のせせらぎ。


わたしの人生に欠けていたものはひょっとしたら煙草だったのかもしれない。そんな気にさえ なる映画だ。「ドライブ・マイ・カー」での2人の喫煙場面ではそのような誘いは受けなかったのに。今作の、1台の車をはさんで、右に立つ男性、左に立つ女性、その奥には建築物。あそこでの喫煙場面はきっと忘れられないだろう。コロンバスに留まり続けた女性と、コロンバスになんか留まりたくなかった男性とが、煙草を機に出会い、会話し、同じものを見つめ、同じものを見つめていながらも違う感想を語り、ある意味、行きずりであるからこそこれまで他者に語ることの出来なかった心の内を率直に語り、そうやって、静かに心にさざ波を立て、心に変化が訪れる。なんてステキなんだ。建築物がそれを静かに見守っている。


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ヘイリー・ル・リチャードソン
「スウィート17モンスター」で、ネイディーン(ヘイリー・スタインフェルド)の親友:クリスタ役を演じてた方。あの映画でわたしは、2人のヘイリーちゃんを応援してました。ここでまた再会できるとは!


   
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