「私は一体何をやっているんだろう」という焦燥と向き合いきれず、時間の有限性から目を背ける日常を、窓枠に切り取られた緑が煽る。電車を何本も見送り、ホームの椅子にぼんやりと座る学生時代を追懐する。
そっと背中を撫でるような穏やかさと湿度の中で、波紋のように広がり影響しあうふたり。モダニズム建築への敬愛はどのような形であれ、教会のステンドグラスから差し込む柔らかな光のように尊く、時の流れを止めてしまう鐘のような荘厳さを併せ持つ。
こちら側とあちら側を、隔てるガラスと繋げる橋の対比が美しくも歯痒い。虫の羽音を聴き、雨垂れを吸い込んだ葉の重さを感じながら、静謐な祈りを捧げることしかできない。洗練されたカットのひとつひとつが展覧会のようだった。