安堵霊タラコフスキー

コロンバスの安堵霊タラコフスキーのレビュー・感想・評価

コロンバス(2017年製作の映画)
5.0
本当はちゃんと本編を見てからでないと言及しちゃいけないってのはわかってるんだけど、大阪の映画祭で上映されたばかりで次上映されるのは当分先だと思うし、予告編見ただけでもすっかり虜になってしまったから矢も盾もたまらずにこの作品や監督について記述したいと思う。

まずこの映画に興味を抱いたのはクロトゥルーディス賞という低予算映画を対象とした映画賞で、君の名前で僕を呼んでを抑えて撮影賞を受賞したという報で、あの美しい映像を差し置いて受賞した作品はどんなものかと検索して予告編を見てみたら、まるで21世紀のアメリカに小津安二郎が蘇ったかのような映像美がそこにあって頗る驚嘆して感動した。

ちなみにこの監督がコゴナダという一見変な名前を名乗っているのは、どうやら小津映画の脚本を書いていた野田高梧に敬意を表してのものらしいが、その姿勢が映画からも十二分に伝わってきて、小津映画好きの一人として才能溢れる同朋の誕生に小躍りしたい気分になった。

それにしても予告編からも感じられる映像の完成度の高さは、とても長編初監督とは思えないもので、監督は小津映画やブレッソンの作品について研究していたらしいけれど、映像だけ見てもその分析と咀嚼をかなり行なっていることがよくわかり、しかも自分と感性がかなり似通っているからこれまた嬉しくなる。

予告の時点で満点をあげたくなってしまう映像美だけど、こんな映像を100分以上堪能できるなら確実に至福の時間を味わえるどころか一日中見ていても飽きない自信はあるから、是非ともまた日本で上映されることを心より祈る。(されなくても海外でDVDがリリースされたら何としてもでも取り寄せて何回でも見るつもりではあるが)

それにしてもこれだけの才能をカンヌ等が放っておくはずはないから、次作が作られたら色んな映画祭で上映されること請け合いだろうけど、それもきっと今作みたく素晴らしい映像美の作品になるはずだから、数年後それを拝める日が楽しみでならない。

追記:
日本での劇場公開の前に予め買っておいたDVDを見たのだけど、やっぱ全てのシーンの構図が美しくて溜め息が出る。本当に良い芸術的映画だった。