フライ

サラブレッドのフライのレビュー・感想・評価

サラブレッド(2017年製作の映画)
4.1
2人の全く違うタイプの美しい女子高生の狂気と雰囲気が面白いサスペンススリラー。
殆どが2人の会話劇だが、淡々と進んで行く中で垣間見える狂気や異常性に、怖さや気持ち悪さよりも、目が離せない儚さや愛おしさなど独特な魅力を感じる自分自身が異常なのかな…とも。

オリビア・クックが演じる高校生のアマンダは、馬を無表情で見つめながら顔を撫で、そしてバックからナイフを取り出す。
アマンダは、アニャ・テイラー=ジョイが演じる幼なじみのリリーの住む豪邸を訪れる。使用人がリリーを探している間、勝手に家を歩き回るアマンダは、別の使用人の挨拶を真似たり、リリーの幼い頃の写真を見て鏡を見ながら笑顔を真似る。リリー宛の封筒に入った大金を見つけるが一瞬考え大して興味を示さず、リリーの義父の書斎に飾られた写真や日本刀に強い興味を示していると、リリーが現れ笑顔で挨拶される。そしてアマンダは無表情で'変わったね'と伝えた。
久しぶりに再開した2人。アマンダは、洞察力に優れ、頭も切れるが喜怒哀楽を持たない障害?を。何より長年乗馬で好成績を積み上げてきた愛馬が骨折し、自らの手で惨殺すると言う異常性も…。そんなアマンダの家庭教師を彼女の母親から依頼されたリリーだが、自身の母親の再婚により抑圧された生活を送っており、アマンダにあっさり義父への不信感を見抜かれ、殺したいと思う?検討してみれば?とまで言われる。
最初こそは険悪な態度を示すリリーだったが、全く動じないアマンダの言葉で次第に仲良くなり、アマンダはリリーの秘密を探り、そしてリリーはアマンダの胸の内を知り、お互いの歪んだ深い闇を共有し心を許す様になり、意気投合していくのだが…。

全くタイプの違う美しいオリビア・クックと、アニャ・テイラー=ジョイが、場面場面に会った音楽と、綺麗な豪邸内や庭で語らう姿は何とも言えないスタイリッシュさやオシャレにすら思えるのだが…。そこに女子高生的なトークも有れば、内容が哲学的でもあり、且つ残酷で恐怖を覚える闇トークが有るので、とても複雑で興味を引く面白さを感じた。
何の不満も無いだろと思える位裕福な家庭に育つ二人の冷徹にも感じる会話の中に、濃厚なやり取りと重い内容は、アマンダに翻弄されるリリーの心理描写や心の変遷は本作の芯でもあり、面白さだとは思うが、自分にはアマンダの哲学的な言葉の数々と行動の面白さが滅茶苦茶 心に刺さってきて、とても興味深く楽しめた。特に序盤、常に無表情のアマンダが、感情に着いて語る'周囲を観察してマネし、感じていると思い込ませていた'と言う言葉だけでも考えてしまい、気づいた時には目から鱗が。怖かったのは、'自分は悪人では無い、善人でいる為には努力がいるだけ'と言う言葉に、何年か前の女子高生殺人犯を思い出しゾッとした。
途中いい歳した自分がアマンダとリリーがテンポ良く無表情で義父を責める姿を見ながら、今更ながら自分はMかもと変な気持ち良さを覚えたのは印象的でもあり面白さも。
一番の衝撃は、エンドロール前にアントン・イェルチンの追悼文を観て本作の後に亡くなったと知った事。本作でも相変わらず素晴らしい演技を見せてくれていた。

最近魅力的で才能溢れる若手女性俳優を見かける様になり、色々な映画が楽しみになってきたが、アニャ・テイラー=ジョイは以前から興味はあったが、本作で一気に2人のファンになり更に楽しみが増えた。
才能溢れる2人の魅力を感じ、楽しむ作品にも思えたが、オシャレな雰囲気と、女子トークの中に、陰鬱な闇と狂気を覚える独特なサスペンスは、個人的にはハマったが…興味があれば是非。
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