ちろる

月と雷のちろるのレビュー・感想・評価

月と雷(2017年製作の映画)
3.4
普通に生きたい。
人より幸せでなくていい。
ただ真っ当なのなんでもない人生を送りたい。
っていうか「真っ当な生き方」って一体なんだ?
主人公泰子は物心ついた時には家族は壊れていて、母は消えて、見知らぬ女とその息子を引き込んだ父。
そんな父も失って、思い起こすのは血の繋がらない4人で過ごした自堕落な日々。
壊れた自分の過去になるべく蓋をしながら、なるべく当たり障りのない人生を歩んで来たはずなのに、突然現れたサトル。
頭と身体で望むものが違うことに戸惑いながらも、どうしようもなく流されていく泰子。
全てが微睡みのようなお話だった。

主人公の初音映莉子さんの演技はあまりにも抑揚がなくて、途中で何度かやめそうになったけど、草刈民代さん演じるダメダメのサトルの母親のラストだけはなんだかとてもグッときた。
ほんの一握り、どんなひどい女にもほんの一握りだけある「母性」。
実母の存在があまりにもニセモノのようで実態を感じられなかったから、泰子が母になる前に彼女の母性に触れられて良かった。
彼女はあそこから真っ当をスタートできるはず。
「真っ当でいること」が常に正しいわけじゃないけれど、彼女なりの「真っ当」にたどり着いた。
それだけでもういいのかもしれない。
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