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心が叫びたがってるんだ。のKKMXのネタバレレビュー・内容・結末

心が叫びたがってるんだ。(2017年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

呪いなんてなかった、と本編の最後の方で成瀬は語りますが、いやいや、成瀬は両親に呪いをかけられてましたよ。夫婦関係の崩壊・家族が壊れてしまった原因を両親が背負わず成瀬に背負わせていますからね。
豊かな出会いと恋の力、そして何より音楽の素晴らしい魔力によって成瀬が成長し、ついに呪いをブチ破るストーリーには引き込まれたし感動しました。

成瀬と坂上が安易にくっつかなかったのも良いですね。ストーリーの根幹の部分においては、ご都合主義を排している誠実さが見て取れます。
そして成瀬が失恋を超えて舞台に立った場面にはグッときました。お城のシーンでは坂上が成瀬をバッチリ受け止めており、あれがあったから成瀬はさらに成長でき、舞台をやりきれたのだと思いました。
しかし、あれができる坂上は凄い。成瀬によって坂上も成長できていたとは言え、感心しつつも「高校生であんなレベルの高いことができるのか?」と思ってしまった。まぁでも、これもミュージカルの奇跡だと思えば納得です。

成瀬と成瀬母とのエピソードもなかなか味わい深いです。
成瀬は家族の負の遺産を背負わされて大変だけど、負わせた母親も罪悪感で苦しんでいる。そして、母親はそれに向かい合えずに逃げており、成瀬にきつく当たるという、負のスパイラルが生じています。つまり、母親も成瀬に呪いをかけたときに、自分にも呪いをかけたんですよね。
母親が成瀬の歌を聴いて嗚咽するシーン。ここで成瀬が母親の呪いも解いたように感じ、大変心が動きました。

物語の中盤は間延びしたように思えて結構飽きてしまったのですが(でも田崎がらみの逸話は良かった)、語り口は丁寧だし、城のシーンからラストの舞台のクライマックスに至る流れは実に素晴らしかった。
伝えることの難しさ、そして伝えて受け止めることによって大きな変化や成長、つまり奇跡が起きるというテーマもとても自然に描かれておりました。
そして何より、悲愴とOver The Rainbow のマッシュアップ、歌詞も含めて最高の一言です。音楽の魔法にかかりました。

観てよかったな、心に残る映画だなとしみじみ感じ入った次第です。
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