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ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書のTEPPEIのレビュー・感想・評価

4.4
Freedom of the press
報道の自由

早速オープンしたばかりの東京ミッドタウン、TOHOシネマズ日比谷にて鑑賞。まずスクリーンまでの動線の悪さも去ることながら、スタッフ達の対応のたじたじさもあり、少し残念…。フライヤーないのも厳しい。とは言いつつ施設自体は最新かつ綺麗なので、鑑賞する身としてはグッドコンディション。さすがにウォーターゲート事件くらいは知っとこうよ……と首を傾げたくなるくらいアメリカ政治、もしくは政党のつくりすらサッパリな方にはオススメできない。「分からん」と劇場を出る方もいたが、非常に勿体ない。
スティーヴン・スピルバーグの最新作は米国政府が隠していたベトナム戦争劣勢という文書を巡る、ワシントン・ポスト社はじめ新聞社とアメリカ政府の攻防を描いた実録ドラマ。同監督作の「レディ・プレイヤー1」の仕上げ段階で忙しいにも関わらず、脚本を読んですぐに撮影を開始したスピルバーグの神業。たった9ヶ月で完成したとは思えない、凝縮された面白さ。目が離せないどころか35mmカメラで撮った空気感と相変わらず影の使い方が印象的なスピルバーグの安定性。しかもワシントン・ポストのオフィスをまんま再現するあたり本気度がすごい。
「ブリッジ・オブ・スパイ」に続いて社会派な作品を手掛けたスピルバーグはまさに常に時代を反映させている第一人者だ。
NYタイムズ紙にスクープを先取りされるが、ニクソン政権による差しどめ。そしてライバル紙ながらも真実を伝え続けようと権力に立ち向かう、建国魂を胸に報道を続けようとするワシントン・ポスト。興味深いのはニクソンが絶対的な悪役として描かれて、かつメリル・ストリープ演じるワシントン・ポストの社主であるグラハムのジェンダー論だ。細かい演出ながらも、当時女性社主という自他共に戸惑いのある状況、そして権力に立ち向かう女性像はまさに保守的な時代にある多様性の灯火とも言える。でも現代のメディアに対しては「ちゃんとやれよ」っていうメッセージもあって、全体的にスピルバーグの皮肉を感じる。脚本は本当に分かりやすくというか、この手の社会派ドラマにおいて「スポット・ライト」を手掛けたジョシュ・シンガーの仕事が大きい。地べた這いずって動く記者達にところどころ挟まれるユーモアも面白いし、メリル・ストリープの演技はやはり良い。キャストはマイケル・スタールバーグやジェシー・プレモンス、ボブ・オデンカークの名脇役が集合し、トム・ハンクスを喰いそうになってたくらいにキャストのベテラン振りも凄い。
新聞記者のプライドを賭けた戦い、そしてスクープを最初に報じたNYタイムズは敢えて控えめに描かれ、ワシントン・ポストに重きを置いているのも本作のポイント。
総評としてスピルバーグの硬派なドラマとしてまた面白い作品となった「ペンタゴン・ペーパーズ」は現代アメリカだからこそ通ずる威信をかけて何かをするという、代々受け継がれる建国の魂を反映させている。壁越しの緊張感、電話越しの緊張感、など観客をハラハラさせるスピルバーグの手腕に驚き。「レディ・プレイヤー1」も非常に楽しみ!
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