Iri17

ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書のIri17のレビュー・感想・評価

4.0
まるで日本のために作ってくれたかのようなタイムリーな映画だった。

報道の自由は民主主義の絶対的な価値である。だから政府やそのシンパの圧力や攻撃で、報道が抑圧される事はあってはならない。
もちろん報道する側は真実を伝える義務があるが、人の集まりであるメディアも完全な存在ではないし、ある方向に傾きすぎてしまう事もあるだろう。
しかし、それを「マスゴミは信頼できない」とか「朝日新聞を廃刊にしろ!」などと言って、自分の信じたい信頼性の低いメディアだけを取捨選択したり、気に入らない報道機関を潰そうと考える方がよっぽど危険なのだ。
私たちはメディアを批判的に、しかし信頼して受け取るという矛盾した姿勢でいることが大切ではないだろうか。

メディアはどれだけ叩かれ、圧力をかけられようと真実を追求する手を緩めてはいけない。ジョージ・オーウェルは「ジャーナリズムは報じられたくない事を報じる事だ。それ以外は広報に過ぎない」と述べている。全くその通りで、報道は報じられたくない事を報じるという役割なので、ニュースが嫌なニュースばかりなのはある意味当然だ。

金と権力を手にした人間は、資本主義の中で最強で、それを追い込めるのはジャーナリズムだけなのだ。

巨悪や神は人の目に見えない。大きすぎるから、『桐島、部活辞めるってよ。』の桐島はスクールカーストにおいて神であるため、画面には登場しない。ロバート・アルトマンの『ナッシュビル』のウォーカーというポピュリストも画面には登場しない。最近であれば、小林勇貴監督の『NIGHT SAFARI』の先輩も画面には登場しない。
今作では、マクナマラは頻繁に登場するものの、ニクソンという巨悪はほとんど登場しない。最後小さく登場するのは、ジャーナリズムによって、ニクソンを追い詰めたからで、このスキャンダルで焦ったニクソンはウォーターゲート事件を起こすことが示唆しれた。これこそジャーナリズムが本来の役割を取り戻した結果だろう。

しかし、真の悪はニクソンの奥にいる軍産複合体であったり、国際銀行家であったりするわけで、今の日本の問題を見れば、官僚に責任を押し付けている政府高官のさらに奥に、日本会議なるやからがいる。ジャーナリズムの刃はそこまで届かないかもしれない。
それでも真の不正や悪を暴きたかったらジャーナリズムに期待するしかない。ジャーナリズムに力を与えるのも、抑制するのも我々国民一人一人なのだ。

ほとんど映画と関係ない話になってしまいましたm(_ _)m
Iri17

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