菩薩

ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書の菩薩のレビュー・感想・評価

4.3
日本よ、これがアメリカ映画だ!を突きつけられた気がしたし、同時にこれがジャーナリズムだ!これが民主主義だ!オレがスピルバーグだ!まで喰らわせれて、スッキリ甘〜い気持ちになったと同時に、なんだかほろ苦さまで感じてしまった、この作品はまさにレモネードだ。「映画」に与えられた120分の枠を存分に使い、いやむしろ少し余らせ、苦悩・選択・連帯・成長を淀みなく描いただけでなく(流れるカメラワークがこれまた素晴らし過ぎる)、戦地の生の声をしっかりと民衆へ伝え、しかもウォーターゲート事件へと繋げてしまうその手腕に唸る。人が走り、気送管が届け、輪転機が回り、そして報道は体制に勝利する。当時とは紙媒体、新聞紙面そのものの強靭さが違うのかもしれないが、だが当然民主主義の根幹の部分は何一つ変わらない訳だし、それを誰にで分かる簡素なストーリーで表現し切ってしまうスピルバーグは完全にド天才であるとしか言いようが無い。今まさに政府の嘘ばかりが表立つこの国はこの作品を真摯に受け止めなければならないし、メディアが果たすべき役割、人民が持つべき主権とその責任について真面目に考えなければならない。いつまで誰と誰がSEXしたやら、あのアイドルがばっさり髪切ったやら、芸人が口滑らして炎上したやら、至極どうでもいいことばかりを伝え続けるのだ、加山雄三の船は鎮火したが、国会はいまだ火だるまであるのに。政治に口出すのはウザい事なのか?ダサい事なのか?目障りなのか?言わぬが勝ちで終わってしまったあの無意味な証人喚問を経て、我ら国民が何を知り得たと言うのか。我々は常に知る権利がある、そして国を変える権利がある、責任がある。大人は子供や孫の未来に対して常に責任を背負っている、そんな当たり前の事を、もう一度しっかり思い出すべきだと思う。互いに守るべき物があるのは分かる、だが一番守るべき物は…決まっている、後は自分で考えよう。
菩薩

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