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ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書のumisodachiのレビュー・感想・評価

3.8
ニクソン大統領政権下に起こった実際の出来事を描いた作品。スティーブン・スピルバーグ監督。

ベトナム戦争を分析した最高機密文書"ペンタゴンペーパーズ"の存在を、ニューヨークタイムズがスクープ。大統領は差し止めを請求し、ニューヨークタイムズを告訴する。ワシントンポストもまた文書を入手し掲載に踏み切ろうとしていたが、奇しくも株式公開のタイミングと重なってしまった。夫の自殺後に社主となっていたキャサリンは、報道の期間としての責務と、会社存続の危機との板挟みになるが……。

ザ・王道。これといってユニークな演出もなければ、やたらと印象的な音楽もない。でも、文句なしに面白い。おばさん然とした動き方で頼りなげだったキャサリンが、重大な決断を下すまでの変化は真に迫っており、メリル・ストリープの技術に圧倒される。編集主幹ブラッドリーを演じるトム・ハンクスのギラギラした攻撃的な様子と、おっとりと控えめなメリル・ストリープの対比が鮮やかで、さすがとしか言いようがない。キャサリンに対する編集主幹の認識の変化も非常にわかりやすく描かれている。

トランプ政権に対する危機意識というか、反発心が大きな原動力になっているのだとは思うが、少し感情的かな?くらいの怒りのエネルギーが良い方向に作用している。明確に権力に立ち向かおうとするブラッドリーではなく、立ち止まって決断を下さねばならないキャサリンを中心に据えたのが上手い。権力と報道の自由という対立する2つの立場が明確になる上に、地味になりがちな新聞社のシーンだけではなく、繰り返し描かれる邸宅でのパーティシーンによって画面に華やかさが生まれ、バランスが良く感じる。

もちろん、女性の地位についてのメッセージがしっかりと込められていることは、言うまでもない。最高裁から出てきて、階段を下りていくキャサリンを見つめる女性たちの列。彼女たちの憧れに満ちた表情が順番に映し出されるシーンには感動した。こういうシーンに出会えるから、映画が大好きで仕方ないんだよね。
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