キャッチ30

ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書のキャッチ30のレビュー・感想・評価

4.0
これほどタイムリーな映画も珍しい。過去の出来事なのに、状況が現在と重なっているからだ。

1971年、ベトナム戦争を分析・報告した国防総省の機密文書「ペンタゴン・ペーパーズ」の存在をニューヨーク・タイムズが暴露する。これに対し、ニクソン政権はタイムズに記事差し止めの圧力をかける。ワシントン・ポストの編集主幹ベン・ブラッドリーはチャンスとばかりにこの一大スクープを報道しようと躍起になる。しかし、記事を掲載すればタイムズの二の舞になり、地方紙でもあるポストにとっては痛手だ。そこで、ブラッドリーは社主のキャサリン・グラハムに決断を迫る。

タイムリーだと言ったのはトランプ政権の誕生だ。新聞を「フェイクニュース」と罵る彼の姿にスピルバーグは報道の危機を感じ、すぐさま製作に取り掛かったという。その姿は劇中で文書を入手してからすぐに記事の発表に取り掛かるポスト社に重なる。

スピルバーグはこの社会派映画にもう一つのテーマを潜ませている。それは女性の躍進だ。メリル・ストリープ演じるキャサリンは新聞社の社長とはいえ、男性社会に呑まれている非力な女性に過ぎなかった。しかし、権力によって報道の自由が脅かされるという危機的な状況を省みて、彼女は勇気ある決断を下す。ある意味、この映画はキャサリンの物語だと言える。

このワシントン・ポストとニクソン政権の闘いは翌年のウォーターゲート事件へと繋がっていく。そのラストの演出がにくい。新聞記者の一人を演じたボブ・オデンカークも二重丸だ。