けいすけ

ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書のけいすけのレビュー・感想・評価

3.9
あのスピルバーグがトランプ大統領就任を受けて製作を開始したという今作。なるほど、見事にトランプの高圧的な姿勢と政策に一石を投じている。報道の自由が危ぶまれる時代に、かつて新聞社が行った歴史的な報道を通して改めて報道の自由を見直す目的を示した。

で、なんと言っても製作段階での裏話がすごいところ。お気づきだと思うが、スピルバーグは今作と「レディ・プレイヤー・ワン」を並行して製作していたとのこと。それにつけて、今作はスピルバーグの製作スピードがいかに早いかを知ることにも繋がった。まずは、キャスティング。主演2人はトム・ハンクスとメリル・ストリープとどちらも名優。その内トム・ハンクスとスピルバーグは共演多数。だから、スピルバーグ撮影中、2人に演技指導を一切せずに1テイクで撮りきったそう。次に、製作作品のバランス。先程も書いたように今作は「レディプレ」のポスプロと並行して製作された。社会派作品とエンタメ作品という真逆のテイストだが、この組み合わせは過去にも、「ジュラシック・パーク」と「シンドラーのリスト」、「ロスト・ワールド」とプライベート・ライアン」、「タンタンの冒険」と「戦火の馬」とスピルバーグは常に並行して作品製作を行なっている。こうすることで、真面目な社会派の中にエンタメというエッセンスがアクセントとして加わり、逆にエンタメに疲れれば社会派作品のエッセンスが効果を発揮する、というようにテイストの違うものが加わることで常に飽きずに、それに客観的な視点で作品を見ることができるのだそう。そして、撮影において欠かせないのがチーム・スピルバーグのスタッフ。音楽のジョン・ウィリアムズに撮影のヤヌス・カミンスキー、編集のマイケル・カーンとお馴染みのスタッフで作り上げるので、もちろん仕事もやりやすい。元々早撮りで有名なスピルバーグにこれだけの要素があれば、作品も早く完成するはずだ。それに、どうしても早く仕上げなければ、という思いも一層の制作意欲を掻き立てたことだろう。

製作スピードの点を踏まえても、全体を通して手を抜いた要素が感じられないのがなんともすごいところ。ショットの安定性は抜群だし、登場人物の縦の動きに、座る動作の徹底など、どこも丹念に作り込まれている。気に入らない絵の繋ぎに関しては好みの問題なのであえて記述は避けよう。

優れた作家性と同様に、公開を急かせ12月から1月のアカデミー賞戦に食い込んだ商業性も流石、スピルバーグ。