こうん

蜘蛛の巣を払う女のこうんのレビュー・感想・評価

蜘蛛の巣を払う女(2018年製作の映画)
4.3
蜘蛛の糸の件。
縦糸には粘着力がなくて横糸のみ粘着力があるので、蜘蛛さんは縦糸のみを伝って動きます。
(だから蜘蛛の大きさによって蜘蛛の巣のサイズも変わります)
良い子のみんな今度縦糸を触ってごらん。




で映画の内容のほうなんですけど、ボキはおおむね好き。
もちろんデヴィッド・フィンチャー版のほうが物語的にも映画表現的にもセンシティブで重みも深みもあったし哀しみもあった。
それに比べて本作はジャンル映画に寄っていて、なおかつフィンチャー版よりもお世辞にも上等であるとはいえない。
個人的にはルーニー・マーラのリスベットに岡惚れのぞっこんで、確かボカシを小さくしたR18版の上映には誇張抜きでスキップで駆け付けたものだ。

そんな分の悪い感じの「蜘蛛の巣を払う女」だけど、僕は“闘う薄幸美女モノ”と呼んでいる、決して精神的にも体力的にもタフではない女性が半ベソかきながら闘う映画が大好き(例:ひつちん(羊たちの沈黙))なので、フィンチャー版はもちろんのこと本作も大前提として好みなのであります。
本作のリスベット演じるクレア・フォイさんが、儚げなルーニー・マーラーより自立心が強そうな感じなので、“薄幸美女”感は希薄なのですが、寒々しいおうちに住んで刹那的なセックスライフを垣間見るだけで、もうOKです。
今回は万能ともいえるハッキング能力も見せるしジェイソン・ボーン的な機転も利きまくりで、なおかつ“薄幸美女”にふさわしい「スカイフォール」ボンドばりの哀しいバックボーンもある。そのへんのジャンル映画的などや!どや!見せ場が連発するので僕はおおむね満足なんですよ。
橋のところでは「どうするのどうするの?」と思わせといての知略には「イエ~イ!」となりましたよ。あと凍った水の上をバイクで疾走するところもグッドね。

フィンチャー版がいいのはまぁそうなんだろうし、その続編が滞って伸びて今こうなってこういう映画になった、というのもわかる気がするし、本作もいろいろと気になる点もあるにはあるけれども、終盤の「イレイザー」的な見せ場に大いにテンション上がってしまったので、この映画をフィンチャー版と比べて貶す人には「たかが映画じゃないか」と優しく説いて回りたい…というのが今の気持ちです。

あと20分くらい足して、物語り的な緻密さを補強してくれても良かったかなーと思うけど、興行的には今のランニングタイムでむべなるかな、です。

スウェーデン版に触れてないのは一作目しか観ておらずほとんど覚えていないからです。
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