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蜘蛛の巣を払う女のTorichockのレビュー・感想・評価

蜘蛛の巣を払う女(2018年製作の映画)
3.8
「THE GIRL IN THE SPIDER WEB/蜘蛛の巣を払う女」

足し算と引き算というシステムがあって、それはもちろん料理にしても仕事にしても何事においても重要な役割を持っている。
僕は、かなり濃い目の合理主義なので、やらなきゃいけないことからどれだけ重要な事柄だけを抽出して、
どれだけ”やらない”を生み出して、効率よくやるかを考えてる。
無駄は無駄じゃないとは思うけれど、はなから無駄とわかっている事をするのは、それは”ただの無駄”なのです。

そして、デヴィッド・フィンチャーという的確な作家が作った前作から、明らかに製作含め、諸々のパワーダウンは否めない。

フィンチャーの大きなテーマである、社会やシステムの破壊を体現していたキャラクターであるリスベット・サランデルは、
そのテーマ性を失ってしまっていたし、映画の空気感も”静かな憎悪”が”燃える怒り”に雰囲気が変わっていた。


が意外にも、今回のお話のテーマ的には、この引き算はアリだったのかも知れないとも考えられる。

この物語に内包している”怒り”は、ルーニー・マーラが演じていたリスベットが抱くのはちょっと違う気もする。
現実的な嫌悪感はルーニー・マーラが抱く事を想像させるが、今回のような激しい因縁みたいなお話は、どちらかといえば、クレア・フォイ向きな気もする。

そう考えた時、実は丁寧に綿密にコンバートさていたような気がする。

ポンっとそこにある日常の違和感が不吉で嫌だった前作に比べると、結構なファンタジー的危機感やサスペンス性は、さすが、フェル・アルバレス。
そのおかげで、彼のお得意中のお得意であるホラー演出が、ひときわ目立ったし、目を引いた。
現実の世界とのリンクも減ったし、画的にもファンタジーではあるけれど、それはそれでアリだと思わせるだけのアプローチがすごい。

スチーム・パンク感溢れる敵兵だったり、漆黒の圧縮袋で真空状態にしたり、何より白・黒・赤のコントラストだったり、
映画の見せ方としては、かなり好物な作品ではある。
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