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パレードのbutasuのネタバレレビュー・内容・結末

パレード(2010年製作の映画)
2.5

このレビューはネタバレを含みます

原作ファンとして決して褒められた出来ではないと思うのだが、でもやりたいことはわかるし、一生懸命頑張って作った感は認めてあげたい。でもやっぱりどうにも上手くない。そんな映画。

まずは群像劇であり5人それぞれの独白で構成される原作を、エピソードを適度にミックスさせながらナレーションを使わず120分の映画としてきっちりまとめていることを評価したい。そして原作の持つ"都会の若者のモラトリアム感"や"ゾッとするラスト"も、雰囲気を出そうと努力はしている。あと話が割とサクサク進み、テンポは悪くない。

しかし、やっぱりどうしても映画としての不格好さ、言ってしまえば邦画の悪いところが全開に出ているという問題が大きすぎる。元々がそれぞれの独白なのにナレーションを使っていない。ではその代わりにどうやっているかというと、心情や説明を全部そのまま台詞で喋らせてしまっているのだ。これは最悪。そんなことわざわざ言う?その台詞不自然じゃない?のオンパレード。まるで演劇を見ているかのような会話ばかりなのだが、演出はリアル路線なので、違和感が半端ない。

その他もいちいち演出が下手というか嘘くさく、わざとらしくて不自然。群像劇としてもエピソードのチョイスと組み上げが上手くいっていないため、結局それぞれの人物をちっとも描けていない。

そして何と言ってもこの話のキモはあのラストである。原作では普段通りのやり取りを見せる皆の前に立ち尽くす直輝の「自分だけが、ひどくみんなに、憎まれていたような気がする。」という一文で終わっており、ものすごく後味が悪く薄ら寒い終わり方をするあのラスト。しかしこの映画では、なんと全員が黙って直輝の方を"怖い顔で"見つめ、BGMは止み、外では雷鳴が轟くのだ。しかも直輝は皆の前で大泣きする。「いや嘘だろ?」と唖然となってしまった。こんなコントのような見せ方をしないといけないのか。楽しそうに過ごす皆を映すだけで良かったんじゃないのか。この終わり方には心底ガッカリした。「世にも奇妙な物語」的な、安いテレビドラマみたい。

あとやっぱりこれは言いたいのだが、直輝に藤原竜也のキャスティングはいかがなものか。彼が悪いわけじゃない。選んだ人が悪い。直輝は他の面々と比べて比較的堅い真っ当な大人に見えていないといけない。藤原竜也では、どうみても曲者感が強すぎるのだ。ということで直輝の正体が明かされても意外性がない、という残念さ。ついでに言えば直輝が尾行をするシーンはどう見てもコントだった。近すぎるわ隠れる気ゼロかよ。そして最悪なことに正体がバレた後、藤原竜也はパニックになって走って泣き叫んだりするのだ。もうこんなの直輝じゃなくてただの「いつもの藤原竜也」でしかない。
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