海老

ラプラスの魔女の海老のレビュー・感想・評価

ラプラスの魔女(2018年製作の映画)
3.0
悪くはなかったです。
でも良くもなかったかな、という感じで、評価が振るわないのも確かに、という感想です。
Yahooレビューの星1ラッシュは極端過ぎると思いましたが…誰かのアンチでもいたのか。

これ言っちゃうと身もふたもないですが、もともと東野圭吾先生作品はそこまで好みではありません。
それは小説の話ですけども、その感覚と似た、何とも言えない物足りなさを感じてしまったな、と。

あらゆる物質の状態を演算できれば、不確実なことは無くなるっていうのは、理系人間なら一度は空想しそうな設定です。自分で振ったサイコロの目を当てる説明の部分なんかは結構踊ったんですよ。数ミリの高さから落とすサイコロの目は誰しも予測できる。高さが変われば演算が複雑にはなるがあくまで延長線にある、という話。まぁ暴論ですがフィクションとしては面白い。
しかし、現実世界に基づいて科学的な説明をされるとかえってモヤつくのが悲しいところ。
「知性があれば演算可能」って…、
・回転速度を目視で測れる動体視力
・高さと方向を目視で測れる空間認識力
・着地点の摩擦係数と衝撃吸収力を目視で測れるもはや謎の眼力
知性で説明できるのは演算の瞬発力であって、目で見ただけで物質の特性を見透かせるだなんで一言も言ってないのに。

そこは敢えて、本人さえ演算を認識せず直感で把握できる能力を得た、と解釈するよう努めました。設定として面白かったのは「サイコロを投げる瞬間までは演算できない」→ 自身の筋肉を寸分の狂いなくコントロールできるわけではない、と演算能力にこだわっている部分は興味深かったからです。
…ったら、あっさり完璧なコントロールで紙飛行機を操って飛ばすマドカ嬢にぶち壊されました。結局なんなのその超能力。

まぁ、ここまではつまんないツッコミです。
とかく予知に近い能力を駆使できるというのが、この作品の大きな特徴となります。超人能力でありながら、なんとも地味な活かし方である事と、ラプラスの悪魔になる覚悟や葛藤にフォーカスされないのが、物足りなさを感じた所以でしょうか。これだけ重たいものを背負っていながら、ちょっと不可解な殺人事件しか表立っていないっていう。
とある別の登場人物の凶行のほうがズバ抜けてエキセントリックなので、こっちが主題だったっけ?と混乱したほど。ラプラスどうでも良くなってるような。

魅力ある役者さんが多いので、映画そのものは観ていられましたが、役不足も否めませんね。
題材は興味深いだけに残念に感じてしまったところです。

2018年、洋画が快作を連発しているので、邦画にも期待しております。
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