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ラプラスの魔女のBellのレビュー・感想・評価

ラプラスの魔女(2018年製作の映画)
3.0
原作は東野圭吾さんのミステリ。
私は原作未読のまま映画を見ました。

遠く離れた2つの場所で起こった、連続不審死事件。
両事件共に、死因は、自然現象下で起こった硫化水素中毒・・・という。
しかし、死亡した2人には、接点があり、警察は事故ではなく、殺人ではないか?という疑いを持ちます。

こうして、地球化学の研究者である大学教授の青江の元に、警察の捜査協力依頼が来るのでした。

しかし、化学者の観点から見ても、現場の状況では、自然現象下を利用した殺人は無理。
事件性は無いと考える青江でしたが、両現場に、円華という不思議な雰囲気を纏った女性が現れたことから、何か、不可解なものを感じ取り。。。

化学者である青江が行きついた真相とは??


・・・というあらすじです。

原作は未読なのですが、タイトルや予告編から、不可能犯罪と思われる事件を、科学的に解明していくお話なのかなぁと勝手にイメージしていました。

映画の主役も、化学者である大学教授ですし、ね!

でもでも、意外にも、SFというかファンタジーというかで、ビックリしました。

本格推理を期待して見た人は、ちょっとガッガリするのではないかなぁ。

東野圭吾作品の『パラレルワールド・ラブストーリー』みたいなSFファンタジー感と、『白夜行』のような、孤独な若い男女の絆の物語をミックスしたような印象です。

あまり詳しく語ると、ミステリのネタバレになってしまうので、言えないのですが・・・。

いわゆる推理物というのとは違って、SFサスペンスと捉えた方がいいと思います。

映画も、描き方によっては、もっと面白くなったのではないかと思うのですが・・・この映画に関しては、うーん(--;

なんというか、映画全体を通して、とても地味だったというか、ただただ静かに淡々と進んでいく割には、オチの意外性がいまひとつ・・・という感じで。
ミステリ感も、サスペンス感も、SF感も、どれも中途半端だった気がしました。

どれか一つに焦点を絞った方が、良かったのではないかなぁと。


原作がどんな風に描かれているのか、とても気になります!


主人公の青江教授も(原作では主人公ではないのかな?)、存在感とても薄かったですし。

てか、私の中では、青江教授よりも、謎の少女・円華よりも、執拗に事件性に拘る中岡刑事よりも・・・ただただ、豊川悦治さん演じる映画監督の甘粕に、強烈な存在感を感じました。

最早、主役は、甘粕なのでは?と(笑)

それくらい、豊川さんの、狂気の芸術家っぷりは、完全に振り切ってました!フルスロットルでした!!

あの圧巻のシーンが見られたのが、わたし的には、この映画のポイントです!!



今回の作品は、SFサスペンスなので、現実では有り得ないトリックです。

とはいえ、科学や医学が、日々進歩する現代において、人間自体だって、いずれは進化するのでは?と思わせる、リアルに考えてしまう部分もありました。

そして、もしも、何十年、何百年後・・・あのような事が当たり前の世の中になった時、この国は、いや、世界、いやいや、地球規模で大きな変革が起こるのだろうなぁって、ちょっと真面目に想像してしまいました。

また、もし、自分が、あのような能力を手にすることが出来たら、果たして幸せだろうか・・・。

可能ならば、手にするだろうか?とも。


でも、あくまで、私個人の考えですが・・・人類は、色々と不確定な存在、先が見えない存在だからこそ、幸せなのだと思うのです。

超人的なパワーに憧れるのは、アメコミの世界だけで十分なのではないかな。

なので、私は、人間にこれ以上の進化は要らない派ですね。


ミステリとしてではなく、SFとして、人類の未来を考えてしまう・・・そんな余韻の残る作品でした。



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