コーディー

アネットのコーディーのレビュー・感想・評価

アネット(2021年製作の映画)
4.0
自らを生贄として捧げ、客を笑い殺すコメディアン、ヘンリーが陥る自己破壊の境地。
操る者と操られる者、解放と拘束、そして愛の捻れによって崩壊していく残酷さ。救われるか殺されるか、どっちが笑える?な悲観極まるカラックス神の戯れの視点に嫌悪と欲求を刺激される。
闇が強過ぎるよw

〝これは虚構ですよ〟とカメラの存在を意識させながらもその作り物に理性は追い付かず、更には超自然的な視点にシームレスに突入するw
アダムの歌声も現実的な嘆きを叫びながらも延々と抜け出せない悪夢でも見てるかの様な不思議な感覚。ただ闇の反復にイマイチ面白味がなく苦痛に感じちゃった部分も多々。

ゴシップや聴衆の薄っぺらい煽りを受けて調和から不和へ流れるヘンリーとアンの愛、娘アネットもビジュアル的な混沌を更に際立たせwどんな感情も保てない。
そんな心の重なりとズレを奏でていく音楽が神聖と不浄、虚構と現実の境界すら無くす。なので心地良いわけは無いけどタブーへの快感は何か好き!

あと音楽を手がけたスパークスは初接触やけどwその前衛的と言うか、ユーモアと攻撃性を兼ね備えた妙に感情昂るロックは好きかも。冒頭のこれから既成概念を破る〝準備はいいかい?〟な粋でどこか稚拙な挑発も『ホーリー・モーターズ』程じゃないけど刺激的で割と惹かれた。