悪魔の毒々クチビル

メタル ヘッドバンガーズ・ジャーニーの悪魔の毒々クチビルのレビュー・感想・評価

4.0
「メタルは何故嫌われるのか」という題材を元に、メタルのルーツや歌詞等色々と探っていくドキュメンタリー作品。

まず始めに言及しておくと、俺はメタルが大好きです。
序盤だけ軽食を取りながら観ていましたが、オープニングクレジットでLamb of Godの''Laid to Rest''が流れるもんだからこっちも飯食いながらめっちゃ頭降っていました。Destroy yourseeeeeeeelf!!!
というか劇中の音楽は当然全てメタルなんですけど、これとChildren of Bodomの''Needled 24/7''は実際ライヴで聴いたあの時を思い出して恋しくなりましたね。早くまたメタルのライヴ行きたい…

今作はサム・ダンなる一人のメタルファンが各国を周り、実際にアーティストやライターの方々から話を聞いていきメタルの事を紐解いていく内容ですが、普通にその行動力が凄いよね。
他国の文化や宗教からメタルを読み取ったりもしているので、中々面白かったです。何故、服は黒じゃないといけないのか、とかね。俺は文化的な側面全く知らなかったので、「え、格好いいからじゃないの?」とか思っちゃいました。アホですね。
当然インタビューする相手はIron Maiden、 Slayer、 Black Sabbath、 Cannnibal Corpse、Dio、 Slipknot等々 メタルファンにはお馴染みの豪華面子ばかりでそこだけでも楽しめます。

個人的に驚いたのが、Mayhemにもインタビューしていたこと。ブラックメタルを掘り下げるなら欠かせない存在とは言え、よくインタビュー行けたなと。
まぁ中身はほぼネクロブッチャーが''Fuck You''言ってるだけだったけど、これは仕方ない。
因みにこのMayhem、劇中でも少し触れられていますがかつてVoが自殺したバンドとしても有名です。
そして何がやばいって、死体を発見した当時のGtがその様子を写真に写してまんまアルバムのジャケットにした事ですよね。
Dawn of the Black Heartsと名付けられたそのライヴアルバムには、堂々と猟銃で頭を撃ち抜いて自殺したデッドの姿が掲載されています。
勿論、タワレコやユニオンとかで売ってる訳がありませんがググれば普通に画像は出てきます。
ガチの死体なので、興味ある人は自己責任で調べてみては。
尚、デッドの死体を撮影したユーロニモスも後に他のバンドのメンバーに殺害されています。闇深ですね。

ノルウェーのブラックメタルにも言及しておりますが、詳しくは本編で。(ぶん投げ)
ただ言うまでもないとは思うけど、全部が全部やべえ奴らではなくてですね。
俺が唯一ライヴを観たノルウェーのブラックメタルバンドはVreidなんだけども、終演後メンバーがファンと写真撮影やサインやらしていて俺も少し彼らと会話したんですけど物静かではありましたが感じは全然良かったです。

で、肝心のメタルがどうして嫌われるのかですが…これも本編で確認してください。(ぶん投げ)
でもこれ、結構国によって違うんかも。
暴力的な歌詞なんかは、大きな理由の一つとして劇中でも挙げられていましたが例えば日本みたいに、英語があまり浸透していない国だと単純に「うるせえから」って理由の方が多い気がする。
見た目とかジャケットは万国共通だけどね。
あとは日本だとそもそもメタルって、自主的にじゃないと聴く機会って中々無いよね。
ぶっちゃけ俺は今まで「メタル嫌い」っていう人よりも、「メタル?何それ?」とかジャンルとしては知ってるって人の方が多く見てきました。

個人的な話ですが俺は元々Marilyn Mansonが小さい頃から好きで、ただそこから他の似たバンドを聴くって事をずっとしていなくて。
高2の時に「MM好きな人はSlipknotオススメよ」というのをネットで目にして、ほー、どれどれと試しにYouTubeで''People=Shit''を聴いてみたらこれがドンピシャで。「あ、これが俺の好きな音楽や!!」とそこからメタルに嵌まり始めたんですが、もしマンソン知らなかったらメタルを聴く事も無かったかもしれないですね。

何より劇中でもあったように、根底にあるのは抑圧された感情の爆発や世の中の矛盾だったりするので、自分もまたそこに共感だったりもっと言えばメタルを聴く事が一種の自己肯定でもあるんだなと思えました。シンプルに格好いいから聴いてるってのが一番だけど。

それとファンに関しても、メタルが今みたいに細分化される前と後では大分違うと思う。良くも悪くも。
今作ではメタルファンの団結力だったり、メタルを聴いていれば孤独じゃなくなると言った良い事かつ共感出来る面に触れていましたが、実は細分化というのは厄介なもので今ではメタルファンの間にも派閥が出来ちゃっているんですよね。
例えばパワーメタル好きとブラックメタル好きは相容れない、なんていうのはよく聞く話ですし今作の製作中にはまだ出現して間もなかったメタルコアなんかは「ガキの聴く音楽だろ」と一部のデスメタル好きから馬鹿にされることも。

そりゃ俺も嫌いなバンドやらアルバムは全然ありますが、それらを好きな人達を否定するつもりは毛頭無いんですよね。
だって別に間違ってないし、お互い。
そこら辺を理解出来ない、悪い意味でお子様な人が少なからずいるのも割と弊害になっている気がする。

ここら辺は完全にネガキャンになってしまったけど、基本はそんな人達は少数ですし、もし出会ってしまったら通常の倍くらいのソーシャル・ディスタンスを保っていれば問題ありません。


ただ先ほども触れましたが、聴く機会が殆ど無いっていうのは人気の無さに割と影響してそうで悲しい。
多分、比較的一般ウケが良さそうなパワーメタルでも誰しもに刺さるような代物ではございませんが、もうちょいメタルにオープンになって欲しいなという思いもあります。
まぁ「メタルを広めたい」って理由じゃなくて「ラウパ復活して欲しい。あともうちょい単独で来日してくれるバンドが増えて欲しい」からなんですけどね。

ドキュメンタリー作品としてはまぁまぁというか、もう少し掘り下げて欲しい所もあったんだけど、俺はメタラーだからというのもあって結構楽しめたりインタビューも面白かったのでこのスコアということで。