真田ピロシキ

操作された都市の真田ピロシキのレビュー・感想・評価

操作された都市(2017年製作の映画)
3.9
ある日冤罪を着せられた無職のゲーマーがゲーム仲間と共に強大な陰謀を暴いていく。このあらすじを聞いただけで最高。日本の青年漫画実写化みたいなストーリーだけど韓国の漫画なのかな?ガバガバな設定と展開で大袈裟なキャラクターがブルース・ウィリスの映画みたいなアクションを繰り広げる。これが良い。見る側としても荒唐無稽な嘘八百とは分かるし、その嘘の中にも真実味を感じられる点が結構ある。これが評判の良かった『悪魔を見た』だと現実的にあり得ないスーパー殺人者と追跡者が深刻ぶりすぎたトーンをずっと展開してて「はぁ?はぁ…」となってた。韓国映画で本作に味わいが近いのは『殺人の告白』でしょうか。笑えるのは重要。

もうツッコミ始めたらキリがない。金属探知機や高性能ドローンを易々と作り20万ウォンのボロ車をスーパーカーにレストアする技術者は何者なんだよと(笑)スーパーハッカーも技量がゲームじみている。ウォッチドッグスって確かこんな感じの主人公だったよね。メディアまで操る強大すぎる敵なのに素人5人が大反撃かませるのもリアリティなど皆無。主人公のクォン隊長がテコンドーの元代表でありながら現在は無職の穀潰しゲーマーというのもなかなか理解し難い所。

そうした疑問点をゲーマーなら冒頭のFPSシーンで些細な事にさせられる。クォン隊長がかなり下手くそなチームメイトの髭面兄貴を助けるために自分が死んでも勝利に貢献したというだけで仲間が現実世界で危険を冒してでも力を貸した事に説得力を持たせられていて、その事は後の展開にも繋がってくる。この話を書いた人は自分以外みんな敵のデスマッチ系ルールは嫌いで皆で協力するオブジェクト系ルールが好きに違いない。オーバーウォッチとかレインボーシックスシージとか。現実におけるチームメイトの年齢層が広いのがeスポーツが盛んらしい韓国を反映してて日本じゃこうは描きにくい。バックでカーチェイスできるクォン隊長はテコンドーに興味を失っても絶対プロゲーマーとして食っていける逸材だけれど、それでもあの面子とずっとゲームしてたのは本当に彼らの事が好きで連んでいたんだろうなと思うと彼への好感度が増し増し。ラストはしんみり。この映画はゲーマーの夢だよ。

社会的な要素はあってどこまで本気かは分からないが凶悪犯とされた人物に対して懲罰的なメディアや大衆、超格差社会への風刺が感じ取れる。恐らくガチでやってるのは謂れのないゲーマーへの偏見。自分もゲームの中でもずっと人殺ししてるとロクなことにならないよとは思っているのだけれど「こんな暴力的なゲームやってるから人格破綻者に違いない」なんて意見には絶対にNOだと言ってやりたいんですよね。ゲームを通じた尊い友情を描いた本作はゲーマーとして大評価したい。