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リバーズ・エッジのTaiRaのレビュー・感想・評価

リバーズ・エッジ(2018年製作の映画)
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映画としては原作を忠実に再現しようと一生懸命な姿勢を感じられる出来だった。行定勲が物語の中に入り込んでまで答えのない問いに苦悩してるので「一生懸命」と思った。原作のまとめ方もソツなくやってるし役者も頑張ってる。映画としては、まぁそんな感じ。

それより『リバーズ・エッジ』を今やる事の意味なんかを考えてしまうよね。原作通り舞台は1993年のままで話もそのまま。あれから25年経ってる。河原の名もなき死体の存在を僕等だけが知っている、というのは当時らしい感覚かな。今って、言ってしまえばそこら中に死体が転がってる様な世界でみんなそれを知ってるでしょ。日本って東京オリンピックからバブル期くらいまで希望の国だったけど、それが死んだ。あの死体ってこの国じゃん。それに彼等だけが気付くんだよね。でも「この死体を見ると勇気が出るんだ」って山田くんが言う感覚は、もう通用しないんだと思うよ。時代が違うからしょうがないんだけど。「生きてるのか死んでるのか分からない」んじゃなくて、もう「死んでいる」か「死にそう」な今の人たちは「生きたい」って言うしかないじゃん。だからハルナに、というか二階堂ふみに「生きたい」と言わせるのは正しいよ。最後に小沢健二から岡崎京子への手紙が歌になって流れるけど、あの歌は視点が2018年現在だし「再生」を歌ってるんで良かった。あの歌に頼り過ぎてる気もするけど。でも映画化するなら今が最後のチャンスだったかもね。もう直ぐ平成も終わるわけだし。ヤダよね、年号変わって新しい時代ですって時に『リバーズ・エッジ』の映画とか観るの。
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