お湯

リバーズ・エッジのお湯のレビュー・感想・評価

リバーズ・エッジ(2018年製作の映画)
4.2
◇失ったものから生まれる温もり

都会に流れる川のように、淀み、くさく、汚い。そんな人間たちを、淡々と撮った映画。

川は変化し続けるから、川であり続けるのだと、言うように、心や体が変わり続けなければ、私は私ではなくなってしまうような感覚。
変わらない、動かない自分を、プラスチックみたい、と表現するのが、私はとっても響きました。

彼女達を撮るインタビュアーの声が冷たいように、こんなにも熱い物語を冷たく見せている。それが正しいのが間違いなのかを議論するのではなくて、あんなにもがむしゃらに生きていく彼らを、どこかで嘲笑い、気持ち悪いと見てしまうことに、危機を感じなければならない気がする。
インタビューの場面が挟み込まれるほど、映画で起きたことや、インタビュアーの質問に対して、自問自答に近いものを行ってしまった。ふと、我にかえされる感じ。


不思議な正方形に近い画角の映像は、初めはあまりに窮屈すぎるけど、だんだんと慣れてしまう。
もう少し、引きばかりで撮って、私を辛くしてほしかったけど、それもなんだかわがままな気がするな。どこまでも淡々としているのが、いいのかも。

出演者全員が素晴らしくて、特に私が好きなのは、SUMIREと森川葵。
森川葵は昔の昔から好きだけど、この一歩踏み外せば全てを破壊しようとしてしまうような、あざとさが良かった。
SUMIREはモデルとして、「ああ綺麗な人だ」とずっと眺めていたのが、今作も続く。演技は、やっぱり浮いているように見えるけれど、その浮遊している美しさも彼女の魅力だとさえ思ってしまう。
「こんな変な顔を見て、褒めてあげている自分が好きなだけでしょ」というニュアンスのセリフが好きでした。実際のセリフを忘れてしまった。ほんと、色々ありすぎて。
そうだとしても、私はやっぱりSUMIREちゃんの美しさに見とれていたい。だって素敵なんだもの。


吉沢亮の「失礼だよ」の場面も、心震えた。

詩や歌を一言一句理解するのが困難なように、この映画も出来事一つ一つ、セリフ一つ一つを受け入れるのは困難だ。
できてしまえば、それは偽物。
だけど、肌で感じたものは、今まで私が持ってきたものよりかは本物な気がする。

心の深いところで、失ってきた何かが浮遊し温かくなる感覚があった。
あえて解釈は深めず、感じたものだけを大切にこの映画を、心にしまいたいと思う。
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