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夜の浜辺でひとりのyuienのレビュー・感想・評価

夜の浜辺でひとり(2016年製作の映画)
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まるで気にかけていないと装いながらも、心の奥底ではきっと来てくれると、うすい可能性に期待して… ぼんやりと、浜辺の砂上で まぶたの裏に浮かぶ顔をなぞる。

彼女が恋人を想い、海辺に佇むときの後ろ姿から感じるのは、失恋したときの 焼きつくようなヒリヒリした痛みでもなく、救いようのない絶望感でもなかった。

例えるならば、抑えきれず ふと零れた、失望と諦めが入り混じる ため息の淋しげな響き。あるいは、ミルクがコーヒーの中で徐々に溶けていって拡がる様子を いつまでもいつまでもぼんやり眺める感覚。
正常を保つ為にさざめく感情を殺したかのような、静かな虚脱感。幻滅と思慕。

絶え間なく、たくさんの会話が交わされていたが、そこにはぽっかりと空洞が空いているような気がしてならないのは、きっと主人公は常に不在の存在に思いを馳せ、いくら言葉を積み重ねても埋まらない寂しさを漂わせていたから。

ままならない愛の中で、わたしたちはいつだって途方に暮れている。

静まり返った 夜の浜辺でただ一人で、「わたし」が「あなた」の心に記した足跡を海に攫われないように、とそっと願って。悲しみの残響を聴き入りながら眠る。