コミヤ

夜の浜辺でひとりのコミヤのレビュー・感想・評価

夜の浜辺でひとり(2016年製作の映画)
4.3
初ホン・サンス映画だから全く作風を知らない状態だった。
カットをほとんど割らずにワンシーンを長回しで撮られている。誰かの意思を感じるようなビデオカメラ風のズームと最低限の動きで構成されるカメラワークで映される何気ない会話が長々と続く。どうやら主人公のヨンヒは彼と別れて単身ハンブルクへ先輩に会いにきたらしい。
30分程経った後に最初の違和感が襲う。引いたショットで捉えられた先輩と歩くヨンヒに全身黒づくめの男が近づく。そして時間を尋ねてどこかに行ってしまう。全く素性の分からないこの男にただならない異物感を感じたけど特に詮索されることはない。そして第1部の終わりに再び現れ、ヨンヒを抱きかかえて遠くへ歩く。その彼女が次に現れるのは映画館。
だからこの男はマルホランドドライブで主人公を夢から覚まそうとするカウボーイや老夫婦と同じような存在なのかと思ったけどよく分からない。

言葉の説明では難しいけどこのように虚実入り混じる不思議な作風になっていた。(誰からも認知されない窓拭きおじさんもそう)

ほかのレビューで知ったけど監督のホン・サンスは本編で映画監督と不倫していたという設定の主人公を演じているキム・ミニと実際に不倫していたらしい。つまり監督の実人生をかなり反映した作品であり、ラストの会話は自分自身と自分の作品への自己批評と自分はこういう人間なんだという宣言みたいになっていた。

夢か現実か分からないけどキム・ミニの可愛さは紛れも無い真実。
コミヤ

コミヤ