中庭

蜂の巣の子供たちの中庭のレビュー・感想・評価

蜂の巣の子供たち(1948年製作の映画)
4.5
軽トラの荷台に復員兵と子供たちが乗り込んでいるショットで、車が道を曲がった直後、後景に海が広がり、順光が当たるようになって一人ひとりの顔が光り輝く。この光の移ろいはとにかく素晴らしかった。
作品を貫くショットの特徴としては、画面の前後に伸びる一本の道路を手前に向かって歩く登場人物たちの動きを、正面からゆっくりととらえるものが多く見受けられる(カメラは後退しながら)。例えば、片足の「おじき」に追われ、真っ黒で巨大な機関車がその姿を覆い隠し、進行を阻む瞬間。車輪の下からは地に着いた片足だけが写り込んでいた。また、今しがた別れた姉の面影を探し瓦礫を駆け回る少年とそれを追う仲間たちの一連のモンタージュや、校庭の砂で即席の青空教室を始めるシーン、全ての子供たちの身体的な躍動の撮り方。感動的な映像の数々に圧倒される。
特筆すべきは、虫の息の少年を背負い山を越えようとする一人の少年を壮大なロングショットで慎重に狙うカメラの視線であろう。最も優しく、少年に向けられた愛おしいまなざし。
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