ヒロ

蜂の巣の子供たちのヒロのレビュー・感想・評価

蜂の巣の子供たち(1948年製作の映画)
4.6
「この子たちに心当たりはありませんか?」

鮮度も深度も桁違いな昭和22年、戦争の爪痕著しい敗戦国日本でその日その日を生きる戦争孤児たちと彼らが慕う復員兵との下関から大阪までのロードムービー。市場で買った食物を闇市で転売、塩田の耕作、木工資材の運搬、大人に混じって労働し食事と金銭を手に入れる。同情するなら金をくれと言わんばかりのその逞しさというか逞しくならざるを得なかった背景がちらついて苦しくなる。でも決して悲観的に彼らの旅路を切り取るのではなく、優しく見守る親の愛が至るところに見て取れる。それもそのはず、監督は実際にこの孤児たちを引き取り各々が持つ悲しい過去を映画という芸術に昇華した、持ちつ持たれつの関係ではあるのだが、彼らの親代わりとしてそして映画監督として行動を起こしたその生き様はかっこよすぎる。痛々しい戦後の原風景をバックにしたロングショットの哀しさ、イマヘイのパルムドール受賞作を彷彿させる山登りのシークエンスの力強さ、ちらっと顔を見せる圧巻のショットの数々には度肝を抜かれる。でもやっぱり抑えても抑えても隠しきれない零れ落ちる悲しみが涙を誘う。この映画はロッセリーニ、デシーカに並ぶネオリアリズモの傑作に位置づけていいと思う。

「彼らに金や食べ物をやるのは簡単だ、大切なのはいかに愛情を持って接するかだ」

《鉄道のある風景》
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