あしからず

蜂の巣の子供たちのあしからずのレビュー・感想・評価

蜂の巣の子供たち(1948年製作の映画)
4.3
「この子たちに心当たりはありませんか?」

バファリンの優しさは半分だけどこの映画は全て優しさでできている。
戦災孤児を引き取っていた清水宏監督が彼らを出演させた終戦すぐの貴重なロードムービー。下関から大阪へ。「みかへりの塔」を目指す復員兵と孤児たち。
卓越したロングショットで戦後の田舎を美しく切り取っている。おっちゃんを断絶する列車や階段から女性を見上げる構図などハッとする画が多い。

全員本物の戦災孤児で演技経験はなくセリフは棒読み、だからこそ生を感じて訴えてくるものがある。みんなよく走って元気で、それが何だかとっても嬉しかった。ヨシ坊はつらいけど…。

『蜂の巣をつついたよう』という言葉があるが、最後の様子はまさにそれ。監督の優しさが詰まったラスト。
「この世界の片隅に」や「火垂るの墓」でも描写されてるように戦災孤児は本当にたくさんいたんだろう。
清水監督のような大人が存在する世界でよかった。少しでも。
あしからず

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