@試写
トスカーナの丘の上にあるレンガ造りのヴィラを改造した精神科ケア付きグループホーム。女王然と振る舞うベアトリーチェは自称「伯爵夫人」で虚言癖のある賑やかな困ったサン。そこに新しく入ってきたのが、痩せこけてタトゥーとリストカットの傷痕を纏ったウツっぽさどっぷりのドナテッラ。ベアトリーチェはドナテッラに興味を抱き、何かとお節介を焼く。
ある日、ひょんなことから2人はやって来たバスに飛び乗って脱走し、ハチャメチャな逃避行に。
やがてドナテッラは働いていたクラブのオーナーの子を宿すも草履のように捨てられて子どもと無理心中を図り、子どもは養子に出され、自身は施設に入れられたという過去が明らかになる。
ベアトリーチェは発奮、元夫の邸宅に現れては、宝石を盗み出し、再び精神病院に収容されていたドナテッラを助け出す。ドナテッラにはどうしても行きたいところがあった・・・・・・。
イヤもう、2人(とくにベアトリーチェ)の振る舞いは呆気にとられて、ただハラハラ。こんな人たち(とくにベアトリーチェ)とはお友達にはなりたくないとつい天を仰いでしまうほど、はた迷惑な困ったサンたち。ところが、にもかかわらず、いいよ、それでもいいよネ、それが人間というものだわサと、気がつけば妙に納得させられて2人を愛おしくさえ想っている自分がいるのだ。これはひょっとしてスゴイことではないかしらん。
ベアトリーチェにはヴァレリア・ブルーニ・テデスキ、ドナテッラは監督のパートナーでもあるミカエラ・ラマッツォッティ。どちらもはまり役で名演。
もちろん、1978年、バザーリア法で精神病院を廃絶したイタリアでなければこんな映画は生まれなかっただろう。2人が最後に戻っていく施設の精神科医は白衣を着ておらず、風通しのよい組織であることが背景としてちらっと描かれてもいる。