えんさん

歓びのトスカーナのえんさんのレビュー・感想・評価

歓びのトスカーナ(2016年製作の映画)
2.0
イタリア・トスカーナ地方に拡がる緑豊かな丘の上に立つ療養施設。ここには様々な心の病を抱えた女性たちが、農作業などに関わりながら社会復帰のためのトレーニングを重ねている。そこで女王のように君臨するのは、元伯爵夫人と吹聴しつつも、虚言癖のあるベアトリーチェ。ある日、その施設に入院してきたのは自分の殻に閉じこもる全身タトゥーの痩せ女ドナテッラ。彼女のことが気になったベアトリーチェは無理やりルームメイトになり、自然と彼女と行動をともにするようになる。心に深い闇を抱えるドナテッラに前を向いてもらうため、二人は診療施設から脱走を図り、逃避行を繰り広げるのだが。。パオロ・ヴィルズィ監督が「人間の値打ち」に続き、再びヴァレリア・ブルー二・テデスキとタッグを組んだヒューマンドラマ。

つい先日同じヴィルズィ監督の「ロング、ロングバケーション」を観たばかりでの鑑賞でしたが、製作時期としては本作のほうが少し前ということになります。予告編を見る限りは、「テルマ&ルイーズ」と「カッコウの巣の上で」をいいところ取りしたような感じかなと思いましたが、予想に反して、2人が入院している療養施設はすごく安穏とした施設で、逆にベアトリーチェとドナテッラの2人のほうが破天荒に脱出していくというキャラクター設定でした。特に、ベアトリーチェのほうが破天荒過ぎる(笑)。虚言癖はまだいいものの、施設の中でも女王様で他の患者たちに辛く当たったり、外でも他人はお構いなしに自分勝手な行動を繰り返していく。彼女があまり愛されないキャラクターなので、僕はここで少し引いてみてしまいましたが、ドナテッラとも合わせて、2人の行動を容認できるか否かで、好き嫌いが結構分かれるように思いました。

そんな破天荒なベアトリーチェですが、そこでも揺るがないのがドナテッラを思う心。最初は同性愛的なものなのかなと思いましたが、彼女たちの行動を観ているとそうでもなさそうだし、ドナテッラが息子を失ったことで心に大きな穴が空いているのをベアトリーチェがどこか感じての友情なのかな、、と無理くり考えると、そんなような感じもする進め方でした。「人間の値打ち」や「ロング、ロングバケーション」では分かりやすい人間の感情に迫っていましたが、本作の2人を巡る関係はどうも頭では理解できない。女同士の友情は男には分からないものかもしれないですが、そこに共感できないと少し観るのが辛い作品かもしれません。それでも心を打つのが終盤にある、ドナテッラが再会した息子との何気ない会話のシーン。こんなに近くにいて、血の繋がりもある関係でもあるのに、近づくことができない関係。ラストシーンの儚さには涙腺が緩むことは必死です。