壮大な物語も最終章を迎えて二つの戦いに集約されていく。一つ目の戦い、ゴンドールの首都ミナス・ティリスの攻防戦のスケールは前作のヘルム峡谷での戦いをも凌ぐ。甲冑に身を包んだ騎士達の姿は中世ヨーロッパの戦闘を再現したようで魅力的だ。敵のモルドール軍は凶悪なオーク、甲冑に身を包んだトロル「オログ＝ハイ」、巨大な戦象オリファント、フェルビーストに乗って空中から襲うナズグルと多彩なモンスターを揃えて興奮させる。この両者の激突は凄まじい迫力で映画史に残る戦争シーンだ。二つ目の戦い、滅びの山を目指す旅路ではフロドを献身的に支え続けるサムの姿が印象的だ。「指輪の重荷は背負えなくとも、あなたなら背負えます」とフロドを背負う姿には感動した。ではフロドは何をしているのか。何度も助けられながらもゴラムに騙されてサムに猜疑心を持つフロド。果たして主人公にふさわしいのだろうか。しかしここでフロドは三つ目の戦いをしていた事に気づく。サムも背負えない指輪との戦いだ。作中の誰もが正気を失う指輪の魔力。それと内面で戦いながら滅びの山まで運んできたフロドは主人公にふさわしいと思う。「フロドのために」というアラゴルンの雄叫びはそれを証明している。ファンタジーの最高峰のシリーズを締めくくる素晴らしい作品だった。
