Inagaquilala

嘘を愛する女のInagaquilalaのレビュー・感想・評価

嘘を愛する女(2018年製作の映画)
4.0
2011年3月11日の東日本大震災の日に知り合った川原由加利(長澤まさみ)と小出桔平(高橋一生)。混乱の群衆のなかで、ハイヒールで歩いていた由加利に、自分は靴下だけになり、そっとスニーカーを差し出す桔平。この出会いのシーンはなんとも印象的だ。

その桔平と同棲5年目を迎えていた由加利だが、彼女のもとに突然、警官が訪ねてくる。くも膜下出血で倒れていたところを発見された桔平だが、彼の所持していた運転免許証も医師免許もすべて偽造で、彼がいったい何者であるか一切不明だったのだ。

「あなたは誰?」というキャッチで劇場予告も流されていて、ミステリー的導入で作品は幕を開けるが、その意識不明の桔平が、分厚い小説の原稿を残していたことから、物語は別な展開を始める。「ウーマン・オブ・ジ・イヤー」に選ばれるくらいのキャリアウーマンの由加利だったが、自分の愛した相手がいったい何者だったのかという疑問は大きく、ショックで仕事も手につかず、彼が残した小説をもとに、医師だと言っていた彼のほんとうの姿を探し求める。

企画は、監督の中江和仁が「TSUTAYA CREATOR’S PROGRAM 2015」に応募して、グランプリを受賞したオリジナル。中江監督があるエッセイからヒントを得て、10年間温めていたものだった。この企画をもとに新たに脚本を書き下ろし、映像化につなげた。

このところ、コミック原作の若者向け作品が目立つ中で、これは大人の観客に向けた、純粋にオリジナルな脚本をもとにした作品。かなり当初の企画から物語は練り込まれており、ミステリー的な趣向は、途中から徐々に転換されていき、最後は愛の物語へと行き着く。

主人公の由加利は、桔平が残した小説を頼りに、ほんとうの彼の姿を探し求めて瀬戸内の島々を彷徨うのだが、それは彼女の心の旅でもあった。桔平を演じる高橋一生が、このミステリアスな男を見事に演じている。最近では「THE LIMIT OF SLEEPING BEAUTY リミット・オブ・スリーピング ビューティ」でも、自殺してしまう謎の男を好演していたが、この作品でも、彼の演技での貢献度は高い。とりあえず、ひさしぶりにオリジナル脚本の素晴らしい大人の作品に出会った気がする。