きよぼん

嘘を愛する女のきよぼんのレビュー・感想・評価

嘘を愛する女(2018年製作の映画)
4.1
由加利(長澤まさみ)と小出(高橋一生)は同棲中。ある日、小出は脳梗塞に倒れる。彼が持っていた免許証は偽造されたモノ。仕事も職場もウソ。由加利は彼が本当は誰だったのかを探し始めます。

由加利の操作に協力する人達がいい。しょぼくれた探偵・海原を好演する吉田剛太郎の存在感、長髪でいかにもオタクのハッカー木村役のDAIGOもテレビ番組とは全く違った姿をみせてくれます。エキセントリックな謎の女・心葉の川栄李奈もキャラにハマってます。序盤は登場人物の魅力でぐんぐん引き込まれていきます。

物語は中盤から瀬戸内海へ。瀬戸内海の美しい景色に導かれて、手がりもポツポツとつかめてくると、映画を観ている人は「だいたいこれってこういうストーリーなんでしょ」と思い始めます。しかし、そこでちょっとした裏切りに出会うことになるのです。

これは、由加利が小出のことを「こういう人だ」と思っていたのに裏裏切られるということが、物語の展開によって観客にも起こり、ハッとさせられるということです。つまり人というのは、「こういう人だ」「こういうことになっている」と思い込むものですが、それは自分の認識であって、真実などはわからないということでしょう。

「こういう人間と深く関わらないで、ラッキーだと考えたほうがいいですよ」

冒頭、小出が倒れた件を担当した刑事から、由加利は言われます。そこで由加利は「いやー騙されて結婚するところだったわー。さっさと別れよう」と関係を断ち切ることもできたはず。でも、いや自分たちの関係はそうじゃなかったはずだ、と真実を求め始める行動に出ます。どちらが良い悪いではなく、人と人の関係というのは、自分がみたものが全てであり、実は本当のことはわからないままで判断するしかないのかもしれない。人がつながるということは、自分がみたことを信じて思い込むことしかないということが、なんとも切ないお話でした。

テーマは別にして脚本レベルでいうと小出の行動がやや不可解。というか、あれって何だったんだろう?という謎が残ります。その部分を「甘い」ととらえるか「映画の余白」ととらえるかでかなり評価が動く作品ではないかと。人間なんて全部本当のことわからねーよ、というテーマだとすれば、自分的には今回は「余白」ということでギリギリセーフでもいいかな。長澤まさみちゃんにめんじてオマケやで!
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