せーじ

女々演のせーじのレビュー・感想・評価

女々演(2017年製作の映画)
4.0
228本目は、いつもレビューを楽しみにしているフォロワーの一人である、ベルサイユ製麺さんのレビューを読んで興味を持った作品。
実は何度か借りようと思っていたのだけれども、タイトルの印象の悪さからどうにも観る気になれず、スルーしていたのだけれども、ベルさんに「せーじさんこういうの好きそう…」と言われ、観てみることに。




…はい、大好物でした☺︎☺︎☺︎
こういうの大好きですw

ストーリーとしては「桐島、部活やめるってよ」と同じく、ヒエラルキーの頂点にいる者がドロップアウトをすることで、周囲の人間関係が大きく揺さぶられてしまう話なのだけれども、「演劇部の女子部員たち(+男子部員一名)」という、限定された人間関係を舞台に置くことで、内向きに閉じた人間関係のエグさと逞しさを坦々と描いていく作品なのではないだろうかと思う。
とにかく、部員たちのキャスティングとヴィジュアルが絶妙で、全員ボンクラな感じが凄く出ていて良かった。特にキーパーソンである男子部員役の彼が畜生な部分も含めて素晴らしい。思わず自分の高校時代の事を思い出してしまった。(あんな畜生なことはしてないけれども)
加えて、LINEを彷彿とさせるコミュニケーションアプリの使い方が巧い。LINEで言うところの「グループ」を上手く使った、部員同士の表裏のあるやり取りが面白いし、当然複数グループを作っていれば起こるであろう"事故"もしっかりと展開に織り込んでいるというのもいい。
そして"彼らだけの世界"で話を終わらせるだけではなく、きちんと「その外の世界との繋がりはどうなのか」を描いていると言うのも素晴らしいと思う。なので、ハッピーエンドというよりは、いくぶんビターな結末にも片足を突っ込んでいるというのがリアルでいいし、「"達成"の後に彼女たちが得たもの」をきちんと描いて終わると言うのもよく出来ていると感じる。

ただ、人間関係の「スクラップ&ビルド」を描く作品として、急所になりがちな「スクラップ後からの再ビルドしはじめ」の部分が、若干唐突で描き方が足りていないのでは…と思ったりもしてしまいそうになるのだが、基本的には76分というタイトな尺の中にきちんと描くべきことをテンポよく描いている、良作なのではないだろうかと思いました。

そうそう、観ていてこの作品と似たような題材で「桐島~」のほかに実写の「心が叫びたがってるんだ」を思い浮かべました。もっとも「心が~」は、展開といい登場人物といい、何一つ被る部分は無いんですけど、それと比べると似たような題材を扱っていて、似たようなツールが登場するのに、爽やかさとボンクラさが全く違うなぁ、面白いなぁって思います。
見比べてみると面白いかもしれません。
それと、橋爪功さんがコメディリリーフとして、凄く有能なお仕事をされていたのも印象的でした。
興味がある方はぜひぜひ。
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