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永遠のジャンゴのKUBOのレビュー・感想・評価

永遠のジャンゴ(2017年製作の映画)
3.5
11月8本目の試写会は「永遠のジャンゴ」。アンスティチュ・フランセにて、監督のエチエンヌ・コマールさんのトークショー付きで鑑賞。

まず、この作品を見て良かったことは「ジャンゴ・ラインハルト」というギタリストに出会えたこと。ジャズは好きなんだけど、そんなに深くないので、この作品で初めて知りました。火傷で左手にケロイド状の跡があり、薬指と小指が使えない。ギタリストとしては致命傷にも感じるが、残りの2本の指で(親指は弦を押さえるのには使えないから)超絶技巧の早弾きをやってのける! 次元は違うと思うけど、私は「GONTITI」や「DEPAPEPE」が好きなので、ノスタルジックなゆる〜いのも、思わず踊り出したくなるのも、両方好き。とりあえず Amazon Prime にジャンゴ・ラインハルトのアルバムがあったので、聴きながらレヴュー書いてます。(ここまで音楽のことしか書いてませんね(^_^))

1943年、パリ。ジプシー出身のジャンゴは、この時すでに人気ギタリストとしてホールを満員にするミュージシャンだった。だが支配を強めるドイツ軍はジャンゴにベルリンで演奏するようにと命令を下す。それを良しとしないジャンゴは家族と共にスイスへと脱出を試みるが…

ドイツ軍からの演奏に関する細かい指示が笑う。「ジャズを演奏する時でもベースは弦を使って弾くこと」「足でリズムを取ることを禁ずる。これは扇動に当たる」「リードは5秒以内」などなど。これじゃジャズにならない。

監督によると、主演のレダ・カテブはギターは全くの素人だったそうで、撮影に入る前に相当ギターの練習を積んだそうだ。おかげで世界一のジャンゴのエアギター奏者になったとか。音は出してはいないそうだが、画面から伝わるエアギターは相当な腕前だ。演奏自体はストーケロ・ローゼンバーグが弾いている。

また大戦中の人権問題というとユダヤ人ばかりに思いが行きがちだが、ジャンゴたちのようにフランス国内にいたジプシーたちも同じように迫害されていたということも初めて知った。

終盤、山を越えてスイスを目指す件は「サウンド・オブ・ミュージック」とも重なる。

ラストにかかる「迫害されたジプシーのための『レクイエム』」は、戦後一回だけ演奏された後、楽譜が消失。今回、音楽家ウォーレン・エリスが残された譜面からインスピレーションで補作、サウンドトラックとして復活したものだ。

エチエンヌ・コマールは今回初監督ながら「チャップリンからの贈り物」や「大統領の料理人」などの脚本を手がけている名脚本家。単にジャンゴ・ラインハルトの伝記の映画化とはせず、いちミュージシャンの目を通して第二次大戦時のフランスを描いた作品となった。

いかに困難な時代でも、ジャンゴの音楽に人々が笑顔になって踊る様子に、音楽の力を見た。
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