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アイスと雨音のtetsuのレビュー・感想・評価

アイスと雨音(2017年製作の映画)
4.1
去年、短編映画を撮影することになった際、直前に気合いを入れるため、鑑賞。

ある演劇のオーディションで選ばれた ものの、上演中止になり、行き場を失った6人の若者たち。
やるせなさと憤りを募らせる彼らは、ある行動に出る...。

『1917』が注目されるのなら、もっと知られてもいいはずの正真正銘のワンカット日本映画。
(というか、本作が、あまりにも知られていないのに『1917』がもてはやされてしまう現状は、確かに不遇だとも思う。)

ワンカットながらも時間の省略や幻想といった演出を施しているのが印象的で、そういう点ではワンカットを舞台的な手法として、取り入れた作品のようにも感じた。

果たせなかった夢や希望、様々な苛立ちや憤りが込み上げてくるラストカットが胸に刺さりすぎて、自然と泣けてくる。

本作を観て「自己満足」と言う人も一定数いるのかもしれないけれど、監督本人の実体験を元にしたという脚本*と、実際にオーディションで選ばれたという主要キャストの思いを考えると、そう割りきることは自分には出来なかった。
*それどころか、本作のクライマックスシーンに登場する"ある場所"は、その実体験の結果、使うことが可能になった場所らしい。

大衆に伝える努力をすることはとても大事だけれど、大衆に迎合する作品が多い世の中で、作り手が正直に自分に向き合って作った本作の方が信頼できる様な気がした...。

完全なる好みではあるが、個人的には『カメラを止めるな!』より好きな一作。

参考
MOROHA『遠郷タワー』Official Music Video
https://youtu.be/DvDvmKNGiDg
(本作の舞台裏、その一端。)

松居大悟の戦い 映画・演劇といったジャンルの境界線上をもがく - インタビュー : CINRA.NET
https://www.cinra.net/interview/201803-matsuidaigo
(これを読んだら、確実に見え方が変わる。)


2021/6/3 追記
#シリーズ:下北沢の映画 を追記しました。
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