アズマロルヴァケル

パイロマニアック 炎の中の獣のアズマロルヴァケルのレビュー・感想・評価

3.5
ノルウェー産大人になれない少年の映画

19歳の少年ダグは消防団隊長の父と清掃員の母を持つ消防団の若者。ダグは消防団の仕事をと雑木林をマッチ一本で燃やそうと火を着火して燃やし、タイミングのいい頃合いならば父と共に消火活動に明け暮れた。しかし、父親が年齢のこともあってか体調不良でダウンし、一人で消防団の仕事をして仲間たちと消火活動をするようになっていった。次第にダグは心の葛藤から雑木林から空き家に、空き家から民家にと放火の規模を大きくし・・・

映像は淡々と静かでこれこそ北欧映画のスタンダードと言える映画ではありました。VFXも完成度が高く、パッと見では本物じゃないかと思うほど精巧なつくりでした。

内容はどちらかと言えば少年ダグの心理に考えさせられる話で、放火して消火し、放火して消火活動しての繰り返しではあるものの、実はダグ自体が現代で言うところのコミュ障で人付き合いが苦手な人間というのだからよっぽど内心ストレスが溜まってただろうと思う。父親や女友達に消火活動で褒められたい尊敬されたいといった他者からの認識が不足してしまうとなると・・・なんだかせっかく努力して頑張ったのになんでこいつが皆に認められるんだろうというよくあるやるせなさややりきれなさに通じるのかもしれない。

ダグ役の役者さんの掴みどころのない表情や若者が故のやりきれなさを表現している点も褒めたいところだが、ダグの母親役のもしも息子が・・・と我が子を不安視する気持ちが出ていてじわじわと切なくなりました。特にラスト手前で母親がダグの放火活動を見たときとかダグがパトカーに乗って署に行ったあとの母親の表情なんてまあ悲しくて悲しくて・・・。

10代後半の男女にはこれがどういう心理で描いているのかということをしっかり説明込みで見た方がいい映画でありました。