凛太朗

顔のない眼の凛太朗のレビュー・感想・評価

顔のない眼(1959年製作の映画)
3.8
1959年のフレンチ・ホラーであり、外科手術をホラーで描くという、今やありふれまくった題材の草分け的存在であり、聳え立つ金字塔。
現在は兎も角、当時のハリウッドではヘイズコードによってこれは確実に作れません。
ということで、今の感覚で観てどうのこうのという話ではないですね。当時としてはグロテスクで斬新だった。(今観て目を背ける人も居るんでしょうけど)
ホラー要素もさることながら、この映画、ファンタジーとしての美しさも持ち合わせて居ます。
ラストの白い仮面に白い服、そして白い鳩。
清廉潔白とか純粋、平和というポジティブなイメージとは裏腹に、無や空虚といったネガティブなイメージも連想させます。

マッドサイエンティスト、もとい、ラウドネスよろしくクレイジードクターな外科医の主人公は、自分の運転による交通事故によって、娘の顔に傷を負わせてしまったという罪悪感、或いは愛故に、娘と同じような姿をした若い女性の皮を剥ぎ取って、皮膚の移植手術を実行していたつもりのはずが、実は娘のためではなく、得ることのできない功績や名声、単純な科学や医学への興味によって犯行を行なっていたことがわかる。
助手を演じるのはアリダ・ヴァリだけれど、彼女もまた博士の手によって施工済。
博士に対する愛か恩義が忠誠か、絶対服従の関係であり、彼女もまた若い女性を物色し、助手の務めを果たす。
要するに二人ともサイコパスですね。純粋と言えば純粋。

娘のかぶる仮面が、それこそ犬神家の佐清。(あの佐清は佐清じゃないけど)
マスクの下はどうなっているのか?と想像力を掻き立てられるわけだが、(映るけど)『顔のない眼』の顔のない部分を想像してしまう自分がいることが、何よりホラー。
凛太朗

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