ryosuke

顔のない眼のryosukeのレビュー・感想・評価

顔のない眼(1959年製作の映画)
4.3
明暗のコントラストの強調された画が安定してスタイリッシュ。影の多用や明滅する光を顔に当てる描写などの表現主義的な演出も好み。木々を反射する車体や鏡等による多重的なイメージも登場人物の不安な心情を強調する。 対象物にゆっくりと近づいていく目線カメラが不気味で良い。 カルトという評判の割に演出は手堅く、ストーリーも(奇妙ではあるが)真っ当な感じで展開も先読みできるが、充分良質な作品となっている。
黒沢清やギルレモ・デルトロにも影響を与えているらしい。
冒頭の移動撮影が車内からの風景であったことが分かるという最初のシーンから引き込まれる。
顔の皮を剥がすシーンは単調な割に長くてエグいのでちょっと勘弁してほしかった。
作品にそぐわないお気楽な音楽が繰り返されることは同じアリダ・ヴァリ出演の「第三の男」と同様だが、本作は場面に応じて不穏なアレンジが追加される。 犬の鳴き声も不安を煽る。
手術後の顔が人工的に見えるのは表情と照明の工夫だろうか。
作中、手術後の顔を天使のようだと評されるが、むしろラストで犬や鳥を解放するマスクの彼女の方が天使のように見えるというのは(意図してないかもしれないが)上手い。
博士が顔にひどい傷を負って絶命するのも皮肉。
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