MasaichiYaguchi

心と体とのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

心と体と(2017年製作の映画)
3.8
ハンガリーの鬼才イルディコー・エニェディ監督の18年振りの最新作は、内気で人とのコミュニケーションが苦手で潔癖症という心にハンデを持つ若い女性マーリアと、片手が不自由という体にハンデを持つ中年男エンドレの年齢も性格も違うが、生きるのが不器用で孤独な2人のラブストーリーを描いていく。
本作では、ポスターやチラシにイラストで登場する二頭の鹿が重要なモチーフになっている。
この二頭の鹿は主人公たちの夢に現れるのだが、雪化粧の大自然の中で佇む姿は息を呑む程美しい。
職場の上司と代理職員という関係性しかなかった2人は、ある事件を切っ掛けにお互いが同じ夢を見ていることを知り、急接近していくのだが…
2人の恋路は、夫々がハンデを持っているがゆえに引け目を感じていたり、マーリアが上手く意思疎通出来ないということもあり、誤解や葛藤でもどかしく進んでいく。
2人の職場はハンガリー・ブタペスト郊外の食肉処理場なので、映画では生々しい屠殺のシーンが出てくる。
2人がいる血塗れで残酷な昼の現実世界と、彼らが夜見る夢の静謐で美しい世界が強いコントラストとなって胸に迫る。
酷薄な現実と幻想的な夢との相克の果て、2人の恋路は何処に辿り着くのか?
世界的にハンデを持つ者、異質な者、異端者に対し排他主義が蔓延している昨今、本作は最後に温もりと希望を残す。