オーデュボン

心と体とのオーデュボンのレビュー・感想・評価

心と体と(2017年製作の映画)
4.4
触れる。

ここまで丁寧で、純粋で、美しく幻想的なラブストーリーが今まであっただろうか。食肉処理場で働く男女は、全く同じ夢を見たことにより徐々に親しくなっていく。ベルリン国際映画祭では最優秀賞にあたる金熊賞を受賞。アカデミー賞外国語映画賞にもノミネート。

開幕シーン、雪のちらつく森に佇む2頭の鹿。その静かな美しさは、ドゥニヴィルヌーヴ監督、ロジャーディーキンス撮影の「プリズナーズ」の冒頭シーンを彷彿とさせる。今作では2人の男女が共通して見る夢、つまり鹿のシーンが複数回挟まれるが、そのどれもが息を呑むほど美しい。更に鹿もまるで2人の人間が乗り移ったかのような自然な振る舞いを見せる。監督は実際に90頭の鹿からキャスティングし、トレーニングも積ませたという。
鹿の登場シーン以外にも、非常に細かいところまで繊細に写した映像がとても印象的。序盤は動物の目線とも取れるカットもあり、その丁寧さに心惹かれる。
コミュニケーションが上手く取れない女性と、片腕が不自由な中年の男性の2人。最初は話も噛み合わない2人だったが、同じ夢を見たことから親密さは増し始める。しかし、両人とも「心と体」に問題を抱え、そう簡単に事は進まない。それでも、不器用ながらに愛を求める2人の純粋な姿に胸を打たれる。主人公の女性マーリアがスプリンクラーの雨に打たれるシーンや、家で1人小さな寸劇を演じるシーンは愛おしく、彼女の素敵な内面が垣間見える。

食肉処理場が舞台ということで残酷なシーンもある。後半には目を覆いたくなる悲劇も起きる。それでも、夢の中を駆け巡る鹿が引き合わせた2人が辿り着くラストには思わず頬が緩む。ハンディキャップを背負った優しい2人の純粋な愛が溢れるラブストーリー、眠れない夜に観て欲しい素晴らしい映画だった。きっといい「夢」が見れるはず。