Taketo

心と体とのTaketoのレビュー・感想・評価

心と体と(2017年製作の映画)
-
言葉で言ってもなかなか相手の心には響かないことって多いと思います。言葉の使い方が上手だったり、または受け手の感受性が豊かだとまた違うとは思いますが。
感じた事を言葉にする過程で咀嚼され熱量みたいなものはどんどん落ちていき本来伝えたい事は伝わらず言葉の意味だけが相手に残る。自分の思っている事をテレパシーでダイレクトに伝えられればそれを越えるコミュニケーションはないのでは?と思います。
そしてこの作品では夢の共有というかたちでそれが起きています。何故同じ夢を見たかは大切ではなく同じ体験を共有したことがとても大切です。

主人公の女性はアスペルガー障害なんだと思います。僕は専門家ではないですし、映画の中でも明確にそうだと言っているわけではありませんがそうだと思います。理由としては指で机を叩く音が気になり会話ができなかったり、命に関わる状態なのにもかかわらず机についた血を拭いたり、パン屑を拾ったりと言ったところです。
彼女はコミュニケーションする事を難しいと考えており、周りの人間も距離を置いています。
会社の上司と同じ夢を見ることで彼女が今まで通わせることができなかった心を通わせることができるようになります。それは前述した言葉で伝えるのとは全く違うものだと思います。
映画で見ている分には二匹の鹿が走ったり、水を飲んだりしているだけで観客にはその夢の素晴らしさは分かりませんが、故に2人だけの世界が構築さていると思いました。
夢の中で交尾しない2人は実際にセックスする事で体と心のブレをなくすことができたのでしょう。結果、映画を見ている側もあの心地のいい朝を共に迎えられたのだと思いました。
さまよっていた思いが居場所を見つけたのかもしれませんね。

これから彼女と付き合っていくのは大変な事だということはゆうに想像がつきます。彼女が机の上にあるパンくずを丁寧に集める仕草にそれがつまっているように感じました。
Taketo

Taketo