140字プロレス鶴見辰吾ジラ

心と体との140字プロレス鶴見辰吾ジラのレビュー・感想・評価

心と体と(2017年製作の映画)
4.0
GW映画12番勝負”第1戦”
※GW中に800レビュー届くのか!?

”夢物語”

悟り系中間管理職のおっさんと
コミュ障型真面目系女子の
幻想的でかつリアリズムなラブコメディ。

「グッドシネマ大賞ノミネート」
「今年ベストヒロイン賞当確か!?」
「今年もっともキュートな映画!!」
※勝手にローリングストーンズ誌

ファーストカットの雪降る森の美麗な風景から、ポツンと2匹たたずむ鹿のカットでグッと心を掴まれました。ストーリーも互いに精神的な欠損をしている男女が、不思議な共通項として「毎晩、鹿の夢を見る。」ということで惹かれあい、葛藤し、そして・・・という哲学的でありつつも、漫画やアニメチックにデフォルメ化されたキャラクターたちが織りなす摩訶不思議なものである。

哲学的やSF的な表層と掴みをなぞりながらも、どこか憎めないキャラクターたちのアンサンブルが心地よく、それでいて精肉工場を舞台としているがゆえに、忠実に牛が殺され斬首され、肉塊となっていくシーンをじっくり映すという映像的な挑戦すらしている脳にこびり付いてくる類の映画となっている。

美麗で幻想的な鹿の夢のフェイズ。
動物が肉塊となっていく血染めの現実。
この二極化する理想と現実の中で織りなされる不可思議な共通項と精神的欠損をデフォルメ化して面白おかしく魅せる恋愛モノというジャンルへの挑戦も評価したい。

何しろ悟り系中間管理職のおっさんに対しての真面目かつコミュ障のヒロインのぎこちない距離感がたまらなく愛おしい。「夢で逢えたら」という日本の和歌にもかつて読み込まれたロマンチックなシチュエーションを、社会からはみ出した位置にいる2人の男女が真面目な雰囲気でアンサンブルするのだから目が離せないし、特にヒロインの美貌と真面目っ気からくる、一般的な視点から見ると風変りというかクレイジーな行動を淡々とするから気持ちが良い。CDショップの試聴シーンや真面目な顔でやる1人遊びがたまらなくキュート。絶妙なタイミングで繰り出されるおっぱいシーンも、真面目っ気が災いしてのある行為を行っている真っ最中というのがまたキュート(「女は2度決断する」でも同じようなシチュエーションあり。)で愛おしい。

むしろ去年の「ベイビードライバー」にあった理想のデートを、さらにデフォルメ化したアニメチックな彼女の脆さと愛おしさの加減がこのストーリーの不安定さへの興を削がずに進めている。字幕の力もあっての絶妙な敬語での2人のやりとりと、間が抜けたシチュエーションが妙に琴線を刺激し続けた良作。