不器用な恋好き好きボーイズとしては諸手を挙げて歓迎したい映画。特にマーリア(アレクサンドラ・ボルベーイ)の人付き合い下手、恋愛下手の描写が良い。会話のひとり反省会を開いたり、逆に会話のシミュレーションを行ったり。その極致としての浴室のシーンは言葉にできない感情が押し寄せて泣いてしまった。
マーリアがエンドレ(ゲーザ・モルチャーニ)と夢を共有していると判明した瞬間の笑顔で泣いてしまった。お前、そんな良い顔で笑うんかい。
映像も静謐な雰囲気で良い。音楽の使いどころも良い。構成も良くて、序盤ドキュメンタリー、中盤サスペンス、終盤ラブストーリーとすることでダレることなく映画が進んでいく。
屠殺シーンの生々しさというか血の鮮やかさが昔観た『ある精肉店のはなし』よりもあってなんだか逆に非リアルな感じがした。多分こっちは蛍光灯の下であっちは薄暗い場所でやってたからだと思うけど。
マーリアが会話のシミュレーションをする時にエンドレ役をさせている人形が左手ではなくて右手が失われている点など考察要素も多くて、これを書きながらも色々と考えている。観終わったあとも長く楽しめるし、もう一度観たい気分。マーリアの部屋にボンゴがあるのも気になった。