カツマ

心と体とのカツマのレビュー・感想・評価

心と体と(2017年製作の映画)
4.4
出会いは夢の中だった。白銀の雪の絨毯、二匹の鹿はあんなにも自然に交わることができるのに。思い通りに動いてくれない心と体、近くて遠い触れられない距離。愛しているの一言が言えなくて、すれ違っていく二つの想い。でもきっと、二人にはハッピーエンドしか似合わない。だってほら、同じ夢を見ているなんて、あまりにもロマンチック過ぎるでしょう?

アカデミー賞外国語映画賞にもノミネートされたとってもキュートなハンガリー産ラブストーリー。不器用な二人の恋は付かず離れず、スローダンス。きっとありふれていて、ちょっとおかしくて、でも最高に情熱的な恋が始まるような、始まらないような。主演のアレクサンドラ・ボルベーイの不器用過ぎる女性像が段々愛しくなってしまう、不思議な魔力を持った作品でした。

〜あらすじ〜

そこはハンガリー、ブダペストの食肉処理場。財務部長のエンドレは窓辺からある女性の姿を見かけた。彼女は代理職員のマーリア、内気な性格で周りとも上手く馴染めず、仲間内でも浮いた存在となっていた。エンドレはランチの折にマーリアに話しかけてみるも、どうにも話は噛み合わず、会話の端も宙ぶらりん。二人の間には微妙な空気が流れてしまっていた。
そもそもエンドレは片腕が不自由なこともあり、もう恋愛からは卒業することを自身に誓っていた。対するマーリアは夜な夜なエンドレとの会話を反芻しながら、不器用な自分の会話を振り返ることしかできなかった。
そんなある日、処理場から牛用の交尾薬が盗まれるという事件が起きる。警察の指示によりスタッフ全員が心理カウンセラーの詰問を受けると、何とエンドレとマーリアは毎晩同じ夢を見ており、その夢の中で二人は鹿の姿をしていて・・。

〜見どころと感想〜

夢占いでも象徴される通り、夢の中に鹿が出てくることは吉兆、幸運を意味する。そんな鹿のモチーフに守られた今作は、普通に生活していたらきっと成就しないであろう二人の恋を、頑張って、頑張って、と後押ししているかのよう。不器用過ぎるマーリア、人生落ち着きモードのエンドレ、そんな二人だからこそ、こんなピュアで美しいラブストーリーが生まれたのかな。

マーリア役のアレクサンドラ・ボルベーイが挙動不審だったり、ちょっと周りから浮いてしまう女性を完璧なフィット感で演じていて、実際にこんな人がいたら、きっと職場でも浮いてしまうんだろうなと思わせるくらいにはリアルであった。
エンドレ役のゲーザ・モルチャーニは実は俳優ではなく編集者だという。だからこそ二人の恋はこんなにもリアリティに溢れていて、こんなにも応援したくなってしまう。

愛する人と心で繋がるのって難しい。恋愛はいくつになっても分からないことばかり。そんな当たり前のことを恋する二人の姿から感じることができました。また夢の中で会いましょう、それはきっと魔法の言葉。

〜あとがき〜

素敵な映画でした。とてもとても好みの映画でした。家のテーブルでマーリアがフィギュアと戯れるシーンが凄く好き。携帯電話持ってないくだりも何だか実際にありそうで微笑ましい(笑)

恋愛に不器用な二人だからこそ、この映画は特別な透明感で包まれているのだと思うし、こんなにもドラマチックを感じてしまったのかな。
幸せなラストシーンに温かい気持ちになって、今夜はきっと良い夢が見れるかも、、(笑)
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