このレビューはネタバレを含みます
『スキン あなたに触らせて』は、口の位置に肛門がある少女や眼のない娼婦などの奇形の人々と、奇形に憧れる青年、奇形しか愛せない男性といった精神的な闇を抱えた人々を、計算されたパステルカラーな世界観で描く。若さ、痩せ型な体型、美しい容貌など、社会に蔓延る独裁的な〈美〉の価値観への反逆を目指した作品だ。
本作が一貫してパステルカラーかつメルヘンな世界観であるのは、あらゆる色はなんでも定義できることを示し、色に纏わる社会の固定観念を打ち壊すためであると監督のエドゥアルド・カサノバは語る。パステルカラーな色調によって人物たちが向き合う現実の残酷さが強調されているように感じるのは、パステルカラー - 可愛らしさ、無害な少女性など という価値観を鑑賞者が内面化させているためだろう。
身体的奇形である彼らの結末が、「手術によって容姿を変えるタイプ」と「奇形のままを愛してくれる人と出逢うタイプ」、あるいは「奇形である自分を受け入れ、自分なりの幸福を追いかけに飛び立つタイプ」と幾つかの種類が用意されていたのは大変よかった。ダイエットや整形で人々を見返す類いの作品(や現実の物語)は、結局ルッキズムの構造に回収されており、ルッキズムを肯定し、再生産しているに過ぎない(ぼくはそうした作品群には否定的だ)。それゆえに本作が、容姿を社会的な〈美〉の規範に沿わせる(=ルッキズムに従う)結末だけでなく、自らの容姿のままで幸福を追求する形も描いているのは、ルッキズムからの脱出として好感が持てる。
とはいえ、奇形の容姿に見慣れないのは事実であり、個人的には口の位置に肛門がある少女の外見がかなり衝撃的だった。いまだに脳裏から離れず、暫くは肛門や陰毛など、陰部周辺のパーツに対する嫌悪感が抜けそうにない。